私の父は60歳の定年退職後マンションの管理人をしていました。ものすごく器用で大抵の物は自分で直せました。なので住民の方から要望があったら和室のふすまのガタつきや網戸の不具合をはじめ物の修理等出来ることは何でも無償で行ってました。
毎朝定時より1時間以上早く出勤して仕事をし、帰り際に住民から個人的な頼み事をされてもいつも必ずそれを最後迄し終えてから帰宅していました。帰りがすごく遅くなった時があり何故か尋ねると、玄関の鍵の不具合で部屋に入れないで困っている人の家の鍵を直していたら遅くなったと言ってました。
見返りを求める気持ちは一切持っておらず、ただただ住民のみんなに喜んでもらえるのがとても嬉しいと言ってました。そんなですから住民みんなから非常に感謝されて、住民主催のカラオケ大会や忘年会や遠足にいつも母と二人で呼んでもらってました。
65歳の定年制でしたが住民みんなの署名を集め父の定年を70歳迄伸ばすしてくれるよう管理会社に要望書を出すことが決まっていました。でも残念なことに64歳の終わり頃病気で亡くなってしまいました。実家はそのマンションから1時間半位掛かりましたが、それでも何人もの住民の方がお葬式に来てくださり、皆さん口々に本当に大変世話になったと言ってくださいました。もしこのマンションの管理人さんがどなたか亡くなったとしても住民はお葬式に行くでしょうか??
父から騒音に関しては聞いたことが有りませんでしたが、もしそういう問題があったなら父のことですから騒音で困っている人を放っておくはずもなく、解決に向けて出来る限り努力したにちがいないと思います。このマンションの管理人のうち誰か一人でも父と同じような志を持っている人がいれば、ここでの暮らしも随分違ったものになっただろうなあと思わずにはいられません。