ここは停電時に利用できる4系統の電源があります。
【1】共用部の非常時電源
・太陽光発電(エネルギー源:太陽光/供給先:共用部電源)
・非常用発電機(エネルギー源:軽油とか重油/供給先:エレベーター・給水ポンプ・共用保安灯等)
・停電時対応コージェネレーション(エネルギー源:ガス/供給先:共用部電気と空調※熱源としての利用も含む)
【2】専有部の非常時電源
・各戸のエネファーム(エネルギー源:ガス/供給先:各戸の停電時専用コンセント)
~有事の共用部~
この物件は停電しても72時間(3日間)は非常用自家発電機とガスコージェネレーションシステムにより非常用エレベーターと給水ポンプの運用が可能となっています。ただタワーマンションだと非常用エレベーターの設置は義務づけられますし、72時間という時間も東日本大震災後の標準なので今の時期に売っているタワーマンションに比べて特段有利というわけではありません。
武蔵小杉の事例では電源設備が浸水により機能を損なったためエレベーターも給水もストップして大変なことになっているわけですが、ここは上町台ヒルトップかつ南西に向けてなだらかに下っている土地のため水が溜まるような場所ではなく、地下設備もないため、仮に内水氾濫が起こったとしても1~2階の電気設備や発電設備が浸水するような事態はないかと思います。
非常用発電機の燃料となる軽油や重油の燃料は消防法の規制があるのでそんなに多くを備蓄することができないのですが、ここはガスコージェネレーション設備があって、普段は都市ガスで発電するのですが、災害で電気とガス両方の供給が途切れたとしても、別途備蓄するプロパンガスで稼動させて共用部の電源を確保できます。もしガスコージェネレーションシステム単体でも非常用エレベーターを動かせるのならば(どなたかご存知ですか?)、災害時に理事会に大きな権限を持たせて決議不要の決裁枠を設けたりすることで、(近所のガソリンスタンドで燃料調達)OR(ガス屋さんでガスボンベの調達)ができれば非常用発電機あるいはコージェネレーションのいずれかの手段で72時間経過後にも非常用エレベーターの運用が可能になるので、手段の多さという意味ではメリットがあるかなと思います。
太陽光発電は能力的にもエレベーターを動かすような系統に無いと思うので、もし非常用燃料が尽きても太陽光発電と光ダクトで共用部は真っ暗にはならないくらいに考えたほうが良いと思います。
~有事の専有部~
全戸に装備されているエネファームタイプSは稼働中に停電になると自動的に自立運転に切り替え、専用コンセントに最大700Wの電力を供給します。そのためガス供給と水道供給がいずれも途切れていない場合、専用コンセントからの電力供給が途切れることはありません。しかも給湯もできるからお風呂にも入れるし床暖房も使える。また各戸の廊下のセンサー式足元保安灯はバッテリー内蔵で取り外しもできるので非常時の懐中電灯にもなるみたいです。説明されないとこれ絶対わからないですよね。
ただし、エネファームが発電状態にないタイミングで停電になったら自立運転に切り替わらないらしいので、基本常時発電してるはずですが、運が悪くて止まってしまってこんなはずじゃなかったという人が出てきそう。電源が途絶した状態で手動切り替え出来るのかなあ。
というわけで電源多重化されて災害にけっこう強そうには見えますが、
電気が止まる→非常用発電(備蓄に限り)・コージェネ・太陽光・エネファームで供給
電気とガスが止まる→非常用発電(備蓄に限り)・コージェネ(備蓄に限り)・太陽光で供給
と、ガスまで止まるとかなり切迫度合いが高まりますね。それからガスは生きてても水が止まるとエネファームは死ぬしコージェネも動かせないんじゃないかと思います。有事の燃料調達対策と各戸の設備を使いこなすための啓発活動をやっておかないと結構な混乱が起こりそう。