すべて専門家の意見ですよ。
新耐震基準は、1981年(昭和56年)の法改正で作られた基準が最新です。
それによると「震度6強から7の地震では倒壊をしない建物であること」とされています。
この基準をもとに決められたのが耐震指標であり、その判定基準をIs値と呼び、Is≧0.6であることとなります。そのIs値に地域係数を掛けたものが、その地域の耐震指標となるのです。
熊本県上益城郡の場合は地域係数が0.9なので、0.6×0.9=0.54 Is≧0.54が判定基準となります。
地域係数を掛けた耐震基準ギリギリの建物は、本当に「震度6強から7の地震で倒壊をしない建物である」と言えるのでしょうか?
例えば、熊本で耐震基準ギリギリで建てた2つの全く同じ建物を1つ東京に持ってくることができたと仮定します。熊本と東京で同時に震度7の地震が来たとしたら、東京の建物は耐震基準を満たしていないため倒壊をし、熊本の建物は耐震基準を満たしているので倒壊をしないと言えるのでしょうか?
疑問が残りますよね。
しかし、地域係数はすべての建物において「割り引いてもよい」ということではなく、割り引いても良い建物があるということなのです。
つまり、割り引かない建物があり、木造や二階建て以下または延べ床面積200平方メートル未満の建物については、地域係数が考慮されず、日本全国で同じ基準の建物となります。
また最低基準を満たしさえすれば、それ以上の基準で建てることは施主の自由なのですが、昔は、工事費用を抑えるために、最低基準ギリギリで建てる事が多く、説明をされない方が多かったのです。
地域係数の日本地図と比べ、一見大きな違いはないように見えます。
しかし、よく見ると新潟県の一部、長崎県や熊本県の一部など、地震予測地図で赤い部分(確率26%)が、地域係数0.9、0.8の地域に入っていることがわかります。
また、沖縄県も確率26%の地域ですが、地域係数は0.7と飛び抜けて低く設定されており、やや不自然なことがわかります。
地震調査研究推進本部事務局は、阪神淡路大震災を契機に作られた文科省の研究課です。
予測マップは2014年に作成され、毎年見直しが行われています。
対して、地域係数が作られたのは1952年(昭和27年)。
東大地震研究所の河角広博士が、過去日本列島に起こった地震の記録を収集し、今後も同じ頻度で地震が起こると仮定して「河角マップ」を作成しました。地域係数はそのマップに基づいて作られ、1952年に告示されました。
地震学は50年代以降も60年以上進歩を続けています。当然見直しはすべきでしょう。
しかし、地域係数が見直されたのは昭和53年のみ。ザックリすぎた区分けが多少細かに修正されましたが、その後の大きな変更は行われていないのです。
静岡県が地域経数1.2を義務化
2017年10月1日、静岡県は地域係数を1.2に割り増しする耐震基準を、条例で義務化しました。
「次に必ず来る大地震」と言われる、南海トラフ地震に備えてのことです。
南海トラフ地震は、最大M9.1と予測される巨大地震(東日本大震災ではM9.0で日本の観測史上最大)です。
南海トラフ地震が今後30年以内に発生する確率は70~80%と言われており、国が想定する最大死者数は32万人。
そのうち10万9,000人が静岡県内で発生すると考えられています。
静岡県の地域係数は1.0ですが、静岡県はそれに依らず独自の路線で県民の命を守ろうとしているのです。県の試算では、地域係数を1.2にすることで、国の想定する数字より死者を6割減らせるということです。
耐震指標Is値で表すと、『地域係数1.0 Is=0.6』ですので地域係数1.2では、Is=0.72となります。
ちなみに一般的な学校は、Is=0.7が目標値となり、災害時の避難施設となる学校等は、Is=0.75(1.25倍)、消防署・警察署など救護するための施設は、Is=0.9(1.5倍)となっています。