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マンションコミュニティの皆々様方、ごきげんよう。不動産業界に身を置くDJあかいと申します。 この度、スムログという多くの人の目に触れる晴れの舞台をいただきましたので、普段のブログと一味違った学びのある記事を発信していきたいと思います。

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DJあかいのマンション傑作選その3「コープ・オリンピア」後編



これまでのあらすじはこちらです。
DJあかいのマンション傑作選その1「コープ・オリンピア」前編
DJあかいのマンション傑作選その2「コープ・オリンピア」中編

この形状だと窓の清掃も大変ですね
この形状だと窓の清掃も大変ですね


さて、1965年の竣工以来、原宿の移り変わりを見つめてきたコープ・オリンピアですが寄る年波には勝てず、建て替えの話は避けて通れません。
建て替えの理由としては大きく次の3つが挙げられます。

1.耐震問題
前回触れたように現行法令では難しいガラス面の多い設計に加え、外壁や主要部分の経年変化は(修繕を施しているとはいえ)認めざるをえません。また、表参道は特定緊急輸送道路には指定されていないものの、渋谷区防災まちづくり方針では明治神宮・代々木公園への避難経路に指定されています。もし表参道側に向けて倒壊したりすれば都内の交通網に大きな影響を与えます。しかし大がかりな大規模耐震化工事は建て替えとそれほど変わらないくらいの費用が必要とされています。
2.配管や雨漏り問題
給排水管の漏水や天井の雨漏り、壁のひび割れ等に年間多くの予算を割いています。しかしそれは対症療法的な措置であり、今後弥縫策的な対応により多くの予算が必要となっていくでしょう。実際、管理費も平米1000円程度となっています。
3.建て替えガリンペイロの流入
ガリンペイロとはブラジルの金鉱採掘人を指します。彼らは一獲千金を夢見て過酷な労働に身を投じるわけですが(最近NHKで特集されて人口に膾炙しました)、それと同じように建て替えによる事業協力者住戸の再分配(事業協力者住戸はこの掲示板の方にはなじみ深いことでしょう)に与り、一獲千金を狙う個人・法人が部屋を買うようになったようです。彼らは建て替えが成就しないことには目的が達成されないので当然建て替え決議に賛成します。

ガリンペイロ(イメージ) NHK大アマゾン特設サイトより
ガリンペイロ(イメージ) NHK大アマゾン特設サイトより


しかし建て替えにあたって課題がないわけではありません。
一般的に、建て替え案件の場合、容積率に余剰があればそこからデベロッパーが一般の人に売る部屋(保留床)を得て工事費を捻出し、区分所有者は持ち出しなしで建て替えを行うことができますが、コープ・オリンピアは竣工後に敷地の大部分に30m高さ制限(表参道地区計画)がかかったため同じサイズの建物は建てられなくなり、区分所有者が工事費を持ち出しするか権利変換後の面積が現状より大幅に小さくなる(延床面積が小さくなるうえに、一部を保留床に割かなければならないため)ことになってしまいます。居住者の高齢化が進む中で持ち出しはハードルが高いですし、変換後の面積がより小さくなるとしたら最小サイズの区画(7坪)の人は今後の使い道に困ってしまうでしょう。
また、高齢の方のなかにはここを終の棲家と決めている人もいます。




コープ・オリンピア地図(Googlemapより)
コープ・オリンピア地図(Googlemapより)


とはいえ実際、建て替えの話が具体化したことがありました。コープオリンピアの西隣には西武グループの本丸・コクドの本社ビルが建っていたのですが、西武グループの証券取引法違反・有価証券報告書虚偽記載問題で堤義明会長は引責辞任、グループも再編されコクドは解散、本社屋はレーサムリサーチ(現・レーサム)に売却された際に、コープ・オリンピアとコクド本社跡地が共同で総合設計制度認定を受ければ高さ規制の壁を突破できる、そうすれば前述の問題はクリアーした形で建て替えができるということで交渉が持たれましたが、不首尾に終わりました。(原宿新聞2006/12/18「原宿駅前「コープオリンピア」に建替計画 「未だ老朽の懸念なし」も、旧コクドビル建替で浮上」より)

旧コクド本社(東京お散歩生活研究所より)
旧コクド本社(東京お散歩生活研究所より)


コクド本社跡地はレーサムが商業ビルを企画しました(原宿新聞2009/12/18「旧コクド本社ビル跡地、「表参道プロジェクト」で来秋着工へ」より)が頓挫し、ヨドバシカメラに売却しました。ヨドバシカメラは2015年を目途に旗艦店開業を企図していました(日経新聞2013/8/28「ヨドバシ、15年メド原宿に出店 スマホ・美容家電に重点」より)が、2016年6月現在まだ駐車場のままです。

コクド本社跡地(2016年6月撮影)
コクド本社跡地(2016年6月撮影)


コクドの話はこれくらいにして、コープ・オリンピアの建て替えの話はどうなったかというと、単独建て替えの方向で進み、2007年に建て替え推進決議が採択され、行政との調整も進み、2009年には建て替えなるかと思われる状況となりました。(日経ビジネスオンライン「“日本初”、住民による住民のためのマンション建て替え 築44年、東京・原宿の高級マンション管理組合の挑戦」より)
しかし同年、建て替え決議への賛成が組合員ベースでは90%を超えたものの、議決権ベースでは72%の賛成にとどまり、区分所有法の規定する5分の4を超えることができず、建て替えは暗礁に乗り上げてしまいました。そのような結果となってしまった理由としては1F の大型店舗が議決権ベースで20.09%を有しており、事実上の拒否権を持っている現状があったようです。(インデックスコンサルティング老朽化マンション対策会議のCマンションの項参照)

コープオリンピアの店舗区画には南国酒家が入っていますね(本文とは多分関係ありません)
ところでコープオリンピアの店舗区画には南国酒家が入っていますね(本文とは多分関係ありません)


というわけで、日本初の住民による住民のための建て替えは実現することなく、大規模修繕も建て替えもされることのないまま、コープ・オリンピアは今年2016年を迎えることとなりました。マンション黎明期を代表する伝説的マンションだけに、建て替えにせよ大規模修繕にせよ腹を決めて進んでほしいところです。高級マンションのパイオニアは、後続の高級マンションたちに迷走する姿ではなく、いかにあるべきか、進むべき姿を背中で見せてくれることを願ってやみません。


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  1. コープオリンピアが既存不適格だったの初めて知りました。学びがありました

    1. 後からの絶対高さ規制が建て替えを難しくしてる問題はあるんですよね・・・。今後取り上げるマンションでもその話が出てくるかと思います。こうご期待!

    1. ですね。宮田氏がそこまで見越して専有面積(=議決権割合)を設定したかは定かではありませんが、結果としてデッドロックとして働いてしまいましたね。経営的視点からするとやむを得ない判断なのかもしれませんが・・・。

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