第125回 根本的な誤り。それは安さの追求だ!

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いろいろな方からメールをいただいたり、お会いしたりという毎日だが、その中で感じることのひとつは、タイトルの「安さの追求」を図る購入者心理です。当たり前と言ってもよい心理ですが、不動産の場合、それはしばしば仇となります。

 

今日は、そのことを書こうと思います。

 

●安いマンションは値打ちがそれだけ低いことを意味する

言うまでもなく、価値の低いマンションは価格が安いものです。都心より郊外は安く、都心の中でも高いエリアとそうでもないエリアがあります。

 

モノの値段は需要と供給の関係で決まると言われます。新築マンションの場合、原価を構成する土地代は需要の多い都心で高く、需要の少ない郊外部では安いのです。郊外都市でも駅前商業地と駅から離れた住宅地では土地の値段に差ができます。

 

一方、もうひとつの原価である建築費はどうでしょうか?これは都心も郊外も大きく変わることはありませんが、敷地面積の狭い都心と比較的広い郊外では工事のしやすさから都心は高くなる傾向があります。

 

郊外でも駅前商業地などは都心同様の高い建築費になってしまうこともあります。

 

中古マンションに目を転じてみましょう。中古は需要と供給の関係を如実に表すものです。原価がいくらかかったかなどは全く無関係です。買いたい人がなければ限りなくゼロに近づいて行きます。買いたい人が多い便利で価値あるマンションは、たとえ築後何十年経っても何億円もするマンションが少なくありません。新築志向が強い日本国民ですが、そこに住みたいと思う場所に新築がなければ中古マンションでも高い値段で買う人があるのです。

 

私たちは、「価値あるものを安く買いたい」と思っていますが、「売り手は高く売りたい」と考えています。その綱引きの結果、自然に決まるべきところに決まるようにできているのです。

 

安いマンションは需要がないから安いのであり、需要の足りない地域にあるか、一定の需要がありそうな地域でも、品質の差によって需要が発生しない場合があるのです。例えば、高速道路にまともに面していて居住性がすこぶる悪ければ買いたい人はいないでしょう。いても少ないはずです。しかし、便利な都心にあって二重サッシになっているマンションなら、窓を開けられないデメリットと価格を天秤にかける人がいて結構高い値がついたりします。

 

●価値に見合う価格か?

問題は、その価値に見合う価格かどうかにあります。買い手は少しでも安く買いたいので、安いものを見つけると、「お買い得」かどうかを自分なりに判定しようとします。

 

実際はとても難しい判断ですが、気に入れば他人が高いと思っても自分は安いと思うものでもあります。

 

安いかどうかの測る物差しは見つからず、特に新築マンションは売り方の巧拙もあって、安いと錯覚させられることが多いようです。一見安い新築マンションがあっても、実は高いとする専門家の判定も少なくありません。

 

また、高いと承知しても将来性があるので価値があがり結果的に安い良い買い物をするであろうと期待してしまうこともあります。

 

新築マンションの住戸別価格を比較して割安な部屋はないかと探す人もありますが、割安な価格の部屋は、実は何か問題になりそうな部屋である場合が多いものです。1階だから安い、間取が良くないから安い、玄関前にエレベーターホールがあるから安い、バルコニーの先に隣の住戸が半分せり出しているから安いといった実例は枚挙にいとまがありません。

 

安いので「なぜ」と売主に聞くと、あまり言いたくないとしながらも説明してくれますが、「問題があるから安い」ということになるのです。理由は分かったが、それだけの理由でこの価格なら安い、これはお買い得だと判断してしまう人も少なくないようです。

しかし、実際は「その値打ちならもっと安くないと」とお答えすることが多いのです。お買い得住戸を見つけたと、まるで鬼の首を取ったように喜ぶ人もありますが、実はそうでもないのです。

 

「1階住戸はとても売りづらいのです。2階より500万円も安いとお喜びかもしれませんが、リセールのことを考えるともっと安く買いたいですね」

筆者はこう助言します。

「ルーフテラス付きの角部屋は確かに価値があるのですが、実は価格ほどの価値ではないことが多いのです」

 

「タワーマンションの場合、眺望価値の差で上下の価格差が設けられていますが、リセール時には新築時の価格差ほどの差が付かないのです。ですから、眺望価値と価格差には気を付けないといけません」

 

●新築マンションの値付けの舞台裏

マンション業者の値付けを担当する人は販売のプロです。実際の価値とは別の観点で価格を決めています。

 

1階住戸は安くしないと売れないものである。ルーフテラス付き住戸は思いきり高くしても必ず売れるものだ。角部屋は強気でもいいが、中部屋は数も多いから、できるだけ安くしたい。安くした分を角部屋にONしよう。こことここは目玉住戸にして宣伝効果を上げようなどと彼らは考えます。

 

エレベーター前の住戸は嫌う人が多いから少し安くしておこう。ゴミ置場が近い部屋もそうだね。東南の角部屋でもここは線路沿いだから真ん中と同じ単価にした方が良さそうだ。10階までは前のマンションが障害になるから下げておこう。11階から上と明確な差にしておこう。いやいや、前のマンションまで50mもあるのだから、差は小さくていいだろう。はっきりした差をつけると欠点が浮き彫りになるので良くないよ。でも建物の間は向こうの駐車場だから、音の問題を気にする人もいるし、上下格差は広く取っておこう。この間取りは、人気が出ないと思うから安くする方がいいな。

 

キリがないので止めますが、このような議論を少数の担当者間で戦わせながら価格案を作り上げます。当然、全住戸の合計は売上計画と合致させます。価格案ができたら、その中から一部の住戸のみを「価格案」として商談の中で顧客に提示します。

 

しかし、「あくまで案なので、この表はお渡しできません」と担当営業マンは言います。なぜなら変わる可能性が高いからです。うっかり渡してしまうと、値上げしたときに苦情を言われるのを嫌うためです。

 

見せた以上、しかもメモを取ってしまうなら同じことではないかという気もしますが、証拠物を残さないという考え方があるのでしょう。

 

ともあれ、案として提示した価格が顧客の支持をどのようなカタチで得られるかどうか、反応を見る必要があるのです。プロといえども、売り出してみないと、買い手の志向は分からないということなのでしょう。不人気住戸、人気住戸を把握するための必要なテストなのでしょう。

 

人気住戸は高くし不人気住戸は安くする。そうして利益は落とさないようにしたいので、000万円~000万円までと幅を持たせたり、000万円台という表現を用いたりして値上げの可能性を残すという方法が一般的です。安くすることにクレームをつける検討客はいないはずですが、値上げは神経を使うというわけです。

 

こうして第1期の販売を始めるまでには高くても売れそうな住戸の位置(向き・高さ)や人気の間取りタイプなどを顧客の反応から見定めます。

中には、安くしないと売れない住戸がある列、ある面全体ということもあり、その下げた分の原資が人気住戸を上げただけでは足りないという場合もあります。仕方なく、売り上げ全体を下げる(利益を削る)という判断に至ることもあります。

 

こうしてできた住戸別価格は「戦略的な値付け」という例外もありますが、原則として住戸価値なりの値段になっているものです。つまり、安いと思った住戸を見つけても大抵は安い理由があるもので、その秘密を知って糠喜びに終わるのです。

 

●強気な売主・業者査定に従う売主

今度は中古の価格ですが、こちらは比較的リーズナブルと考えた方がいいようです。というのも、個人のオーナーさんは、仲介業者に意見を聞き、業者は市場価格を調べ「査定価格」を提示し、その後にオーナーさんは売値を決めているからです。

 

5000万円の査定と出た我が家を20%も高く6000万円と値付けしても殆ど意味がないからですが、オーナーさんによっては、それでも無理を承知で高値の売り出しを図る人もいますから、注意をしなければなりません。

 

しかし、多くのオーナーさんは5%程度のONに留めて売り出します。5%は価格交渉の成功範囲と言えるものです。

 

また、業者の査定額がそもそも高いということもあるのです。業者は売り依頼をたくさん取りたいという思惑があるので、高めに査定をして売主さんを喜ばせようとするからです。この点も注意しなければなりません。

 

安いと感じたら、どこかに欠点があると思った方が良いのです。事故物件でない限りありえないことですが、「内覧時は気付かなかったが、夜間の道路騒音があった」とか、「近所のコンビニ店の駐車所が不良グループのたまり場だった」といったこともあるのです。

 

尚、業者が仲介でなく売主になっているリノベーション物件は、強気な売値という場合が多いので、ことらも要注意です。

 

●安いと感じたマンション。理由をしっかり分析しよう

安いものを探す努力は、しばしば大きな過ちを犯すのです。

 

人気がないから安い。需要が少ないから安い。それは都心の人気エリアの中にも潜んでいます。

 

人気マンションと聞いているが、なぜか安い住戸がある。欠点が隠れている住戸ではないのか?人気があるというのは本当はまやかしではないのか?そう疑ってみましょう。

安いのはおかしい。安いのは何か気付かない理由がある。そう思った方が正しいのです。不動産には穴場や掘り出し物などはない、そう言っても間違いではありません。

 
・・・・・・本日はここまでです。ご購読ありがとうございました
 

 

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