スムログケーススタディー集「住宅現金一括購入について」

前回に引き続き、スムログのお便り募集フォームからの回答です。たまにスルーしますのでその辺はご容赦ください。あのお便り募集フォームはラジオ番組への投稿だと思ってください。

差出人: さち

メッセージ本文:
教えてください。
近々マンションを契約しようと考えています。
現在、低金利なので現金一括購入できてもローンを組んで購入したほうが良いとの意見を目にしますが、住宅ローン減税を利用できなくても、ローンを組んだ方がいいのでしょうか?特に他の投資に回すことは考えていないので、保証料や利息分がもったいなく感じてしまうのですが。

なるほど。さちさんは、「現金一括購入できて、そして住宅ローンが組めて、なおかつ住宅ローン減税が利用できない」という方なのですね。

住宅ローン減税適用の条件をおさらいしてみると、

  • 住宅とその敷地の取得のための借入金で返済期間が10年以上あること
  • 登記簿面積50平米以上
  • 取得後6ヶ月以内に入居し、その年の12月31日も継続して住んでいる
  • その年の合計所得金額が3000万円以下
  • 共有者が住宅ローンの連帯保証人ではない
※「共有者が住宅ローンの連帯保証人ではない」は適用条件とは若干ニュアンスが異なるので訂正・削除します。こちらの説明については、一番わかりやすい説明として野村不動産があげている「共有持分の決定について」パンフレットをご覧ください(訂正:20171119)。

住宅ローンが組めるということは、年齢や収入に問題がなく、かつ減税できないということは上記どれかに引っかかる場合ということになります。もし、ぎりぎりで50平米以上条件に抵触しているのなら、もし中古で売るときを考えると自分が使うことを考えなくても、部屋を再考した方が良いかもしれません。35平米とかなら関係ありませんけど…

さて、住宅ローンを組むことにより受けられる恩恵は大きく2つあります。
  1. 団体信用生命保険機能:
    住宅ローンの残債を保険金額とした生命保険機能が付帯。銀行や付加金利を払うことによって更にがん保険などの機能を追加することが可能
  2. 期限の利益
    毎月決まった金額を払えば、それ以上は払う必要がないという権利。住宅購入分のキャッシュを手元におくことができる。それを使って他の商品を購入したり貯蔵しておくことも可能
これの合わせ技で、住宅ローン減税(残債の1%が所得税から戻ってくる)が決め手で通常の相談なら「この低金利下では住宅ローンは基本的に組んだほうがいい」という結論となります。

さて、住宅ローン減税を使えなくても住宅ローンを使うべきなのか?私の答えは「YES」です。


生命保険面から考えれば、団体信用生命保険は破格であります。生命保険金額である残債は年月が経っていくに連れてだんだんと減っていきますから、逓減保険の一種である収入保障保険をかけ、一括で受け取る場合とよく似ています(実際にフラット35が団信付きでなかった際、団信ではなく収入保障保険でヘッジする方が安いという技がありました)。

現時点35歳・月12万円の受取・70歳まで(つまり35年間)の収入保障保険をかけるとするとアクサダイレクト生命でシミュレーションすると、月に6,392円。



上記収入保障保険は年金支払保証期間などのオプションが付いていますから単純比較はできないのですが、4000万円を35年・1%で借りた場合の利息は月3.3万円ほど、0.6%で借りると利息は月2万円になりますから、保険部分がかなりの割合を占めることがわかります。

期限の利益も見逃せません。

無リスクとみなせる国債こそ利回りは底になっていますが、4000万円の現金を1%程度で運用できれば、単純計算年40万円の利子を受け取ることができますから、生命保険を実質タダでゲットしているのと一緒です。数十年のスパンで考えられるならMSCIコクサイとTOPIX連動のETFを買っておけば、基本的に損はしないはずです。長い目で見れば資本主義は自己増殖システムだからです。世界の自己増殖スピードより低い金利で”借り続けられる”ことを確定できれば、勝つ可能性が高くなります。

e-mansionおよびスムログということで、残った現金でマンション投資ということもあるでしょうけど、私はマンションを保有するリスクを一つ背負ったのですから、別のカゴにベットするのもありだと思いますよ。

それではでは

P.S.

住宅購入時にはたいへん大きなお金が動くのですが、購入後の生活のことまで親身に考えてくれるのが独立系のファイナンシャルプランナーだと思っております。基本的にモデルルーム訪問のついでで無償提供されるFPさんのサービス、彼らは基本的に保険系の方々で、彼らは保険を売るのが商売ですから本当に親身になっているか、また住宅購入との相性・そもそもの相談クオリティについては、モデルルームでのFP相談、複数回経験した私は大変疑問に思っています。ここに日本の住宅購入における不幸があるのかなぁと思い、「住宅購入相談+住宅購入に伴うファイナンシャル相談」をセットにした【住まいスタジアム】というサービスをプロデュースしました。住宅アドバイザーはスムログでご活躍の三井健太さんです。

住まいスタジアムのWeb上で、三井氏のマンションレポートの抜粋版を随時公開しています。

さて、住まいスタジアムをご利用された皆様の評価は総じて高いものとなっております。住宅購入・それにまつわるお金についてご不安がある方はぜひ、ご利用をご検討下さい!

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マンションアナリスト、ブロガー、インフルエンサー。マンション購入ということに真正面から真剣に考えたブログを足掛け10年も運営しました。忙しくなりすぎて更新が滞りがちですが、スムログも引き続きがんばります、よろしくお願いします!
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3 件のコメント

  • ぶんちき より:

    いつも楽しみに拝見しています。
    質問させてください。

    >共有者が住宅ローンの連帯保証人ではない

    上記について詳しく教えていただけないでしょうか。

    質問の意図としては、ペアローンについてです。
    ペアローンの場合、夫婦それぞれ住宅ローン減税を受けられるものと認識しておりますが、
    通常は共有者(配偶者)が連帯保証人となるのが一般的であると考えており、上記情報と相違があるように読み取れました。

    国税庁の住宅借入金等特別控除の適用要件のページを確認いたしましたが、関連すると思われる情報は見つけられなかったため、教えていだけますと幸いです。

    以上、よろしくお願いいたします。

  • のらえもん より:

    >>ぶんきちさま
    連帯保証と連帯債務の違いですね。それぞれが名義人となって持分に応じたローンを組む場合と、借入名義人が夫もしくは妻1人で、もう一方が連帯保証人の場合は住宅ローン減税の扱いが異なります。

  • ぶんちき より:

    補足情報ありがとうございます。
    パンフレット内の例2のことを指していらっしゃったと理解いたしました。
    今後とも更新楽しみにしております。

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