第83回 その中古。ローン完済後も住み続けられますか?

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新築マンションの供給が減少し、選びたくても選びようがない。そんな状況が数年続いています。もはや中古を無視できる時代ではないのです。そのせいもあってか、筆者へのご依頼も中古マンションの評価やご相談が驚くほど多くなりました。

 

中古選びの要点を第80回でも書いたので繰り返しませんが、注意をしなければいけないポイントは沢山あってか、簡単にゴールに到達しない人も多いと感じています。

 

マンション評価レポートをお送りした後、当該物件を買われたのかどうか、それとも断念したのか、その行方を気にしつつも分からず仕舞いでいると、忘れていたころに、再び別の物件で評価依頼が来て「まだ決めていなかったようだ」と気付かされます。

 

中には経過をお知らせくださる方もあって、ご苦労が何となく伝わって来ると、「中古選びも簡単ではない」と改めて気付かされ、今後も力の及ぶ限り、マンション探しのお手伝いができるようにして行こうと決意を新たにします。

 

さて、そんな日々、築年数の長い、例えば築30年の中古マンションを調べていると、「このマンションは、いったいあと何年住んでいけるのだろうか。20年も住めないのでは?」そんな疑問を持つ物件に遭遇することがしばしばあります。

 

サラリーマンオーナーなら定年後も長く住めるマンションと、もしかすると定年間際に売却の決断をしなければならないかもしれないマンションとに分かれてしまうことがあるとして、その差は何によって生まれるのか、さらには、その見極めのポイントは? 今日は、そんな視点でお話ししようと思います。

 

●信じられないことが起こるのが世の中

歴史を紐解くと、社会的にも個人的にも想定外のことが起こるものだと感じます。前代未聞、まさかのことが世界中で起きてニュースになります。それらは、万にひとつの確率です。

 

2015年10月に発覚した傾斜マンション事件も万に一つのことでした。しかし、同じ横浜市で2014年にも同様の欠陥マンションが露見していたと知って怖くなった人も少なくなかったと思います。

 

2017年には、札幌市でバルコニーの崩落事故が起こりました。建物本体とつながっているバルコニーの鉄筋が腐食して断裂したために、本体から外れて落下したのです。築42年の分譲マンションだったそうです。信じがたい事件でした。

 

バルコニーの多くは、本体から腕のような形で水平に伸びた形になっていますが、支える柱はなくても折れたり垂れ下がったりしないよう計算され施工されています。

 

それが落ちることもあるという戦慄の事実を世間に知らしめたのでした。その昔、大阪市で起きたバルコニー崩落事件は、施工ミスだったと記憶していますが、札幌のケースはこれとは違い、報道によれば42年間、一度も修繕をした形跡がないということが原因だったのです。

コンクリートの初めは小さな亀裂個所から雨水が浸透して内部の鉄筋が錆び、やがて亀裂は拡大して鉄筋は腐食し、膨張、そして断裂という現象を引き起きしたのです。

 

このマンションの管理組合は一体何をしていたのでしょうか?管理会社に委託しない自主管理マンションだったのでしょうか? そんな疑問が解決されないまま、報道は終わってしまいましたが、常識では考えにくい事件でした。

 

●メンテナンス次第でマンションの寿命は延びる

筆者に届く評価依頼の中古マンションの中には、築40年を超えるものもあり、寿命を危惧する声を多く聞きます。しかし、40年ともなると、旧耐震基準の物件なので、寿命以前に大地震に襲われたときの不安の方が先だと思うのですが、そこには触れない人もいます。

 

筆者の答えは概ね「耐震性に問題があること」「大規模修繕の履歴と今後の計画をしっかりチェックしなければならないこと」の2点になるのですが、築40年のマンションは、比喩的に言うと、何事もなく40年生き続けてきたマンションなのだから大丈夫という人間心理が働くのでしょうか、前者の問題を考えもしない人がいることに驚きます。

 

ともあれ、あと何年住めるのかという不安だけは共通しています。清掃状態がどれだけしっかりしていても、外壁や共用廊下の床・壁などのレトロ感は隠しようもなく、一見して「古い」と分かってしまうのです。まさに老醜をさらけ出しているための不安感なのでしょう。

 

少し前、耐震補強工事を実施済みという40年中古の評価依頼が2件続けてありました。そのうちの1件は、2041年までの「長期修繕計画」が立案されていました。数年前に策定したという日付もあり、2017年から見ると24年後まで計画しているのです。つまり、24年後は築64年になるのですが、建て替えの議論はなさそうでした。

 

管理組合の議事録を通覧すると、理事会が毎月コンスタントに開催され、活発な組合であることが伝わってきます。修繕計画書を見ると積立金残高は十分にあり、値上げ予定もないようでした。

支出面では周期的な大規模修繕(屋上の防水。外壁塗装工事ほか)がきちんと計画され、その中にはエレベーターの交換、排水管の交換なども含まれていました。

 

筆者は管理会社に勤めた経験はありませんし、メンテナンス工事の実務経験もないので、適正な計画かどうかのチェックに自信はないのですが、議事録から受ける印象は、可能な限りの延命策を講じて行こうとしているマンションでした。

 

人間は年をとればシワやシミが増え、男性なら毛髪がなくなります。血管が細くなってしまい、血圧が高くなったり、目も耳も遠くなり、足腰も弱くなったりするといったふうに、内外ともに劣化していきます。運動や食事制限、その他の方法で体のケアに努めても、老化を止められないところが多いわけです。

 

それでも、日本人の平均寿命は80歳を超え、もうすぐ90歳に届きそうです。長寿の理由は、健康に関心を持つ人が増え、医療技術が進歩したためとされます。

 

マンションも同様です。最初から丈夫に生まれた(長生きDNAを持った)人もあるように、200年マンションとか100年耐久マンションといった耐久性の高いマンションが多い昨今ですが、築30年、40年の中古マンションの多くは、長生きマンションとして作られたものは少ないのです。

60年か70年、長くて80年?としたら、人間の寿命より短いではありませんか?

 

ある日突然バルコニーが崩落したり、エレベーターが動かなくなったり、はたまた水道水が濁るといったマンションでは困るわけですが、マンションは、寿命が近づくに伴い、不具合があちらこちらで露呈して来るものです。

排水不良や水勢の低下、壁面の劣化・タイルの剥離・崩落、サッシ周りに隙間が発生して風が入り込む、換気装置の機能不全などが目立ってきます。

 

雨漏り、結露、ジメジメ感といった住み心地を悪化させる現象も増えて来ます。とりわけ、コンクリートのひび割れが雨水の浸透を許し、鉄筋の錆、そして膨張、爆裂といった症状に至ると、耐震性の劣化にも重なります。

 

何十年も経つと、応急措置を繰り返して来たものの、たび重なる修繕に根本的な対策の必要度が増して行きます。不具合があまりにも頻繁になると、修繕の意欲も薄れ、劣化した箇所を放置したまま、すなわちメンテナンス放棄という事態もあり得ます。管理費の滞納や修繕積立金の枯渇などが、これに拍車をかけます。

 

日常管理もおろそかになり、共用部分にゴミが溜まり、自転車置き場が雑然としたまま、壊れた機械式駐車場は使用不能、メールボックスの投函扉は半分開いたまま。エレベーター内部は傷だらけで汚れもひどいなどの状態に至る例もあります。

 

こうした数々の問題も、メンテナンスを計画的に実施すれば、寿命は100年に延び、築40年のときに買ったとして、60年は住み続けることが可能になります。

 

●住民の意識の低さ?

管理費や修繕積立金の改訂(値上げ)に反対するばかりか、管理組合活動に関わるのは面倒といったマンション住人の意識の低さが、建物劣化の最大の元凶だと分析する意見も多く聞きます。

修繕積立金が不足しているマンションで、応急処置か根本的修繕かという問題になったとき、根本的修繕に踏み切るとしたら一時金を徴収しなければならない場合がありますが、「一時金を徴収するかどうかは、大半のケースで意見が真っ二つに割れる」と管理会社の知人は言います。

「負担は最低限の一時金で応急処理だけ実施したい」意見と、「資産価値を維持するには一時金が増えても根本的に修繕すべきである」との意見です。

 

応急処置は初期費用も工期も少なくて済みますが、しばらく経つと、また関連する工事が必要になるので、長期的に見た負担はこちらの方が多くなってしまうのですが、目先の支出が壁になるというわけです。

年金生活をしている住人が多く、「多額の一時金を払わなければならないならマンションを手放すしかない」という深刻な意見も出るらしいです。いろいろな事情の住人がいるマンションではよく見られる光景なのでしょう。

 

議論を続けているうちに話が堂々巡りになり、結論が出ないまま2年、3年と時が経過し、建物の老朽化は静かに進行して行きます。

管理意識、資産を守ろうとする意識の差があるためなのか、老いて収入が減り、多額の費用負担に耐えられない住民が多いためなのか、ケースバイケースかもしれませんが、考えさせられる問題です。

 

●そのマンションの寿命は大丈夫ですか?

入居者の中には、あまりにも住み心地が悪いので、やがて賃貸するか売却して住み替える道を選ぶ人が出てきます。賃貸戸数が増えますが、賃料が高くないため、入居者の質が問題になったりします。それが更に住み心地を悪くさせます。

 

すべてのマンションがそうなるわけではありませんが、入居者が足並みを揃えて維持管理に関心を持ち、お金(修繕費)をかけて改修を適切に行ないながら、また管理規約をしっかり守って共同生活を営み、共用部分も我が家の一部としてみんなで慈しんで行けば、50年経ても快適な住まいであり続けることでしょう。

しかし、現実はそうならず、50年も経つとマンションはスラム一歩手前に陥る可能性もあるのです。まだ生きてはいるが、死んだも同然のマンションになってしまったら、売却金額もしれています。二束三文と覚悟した方がよいかもしれません。

 

築30年のマンションを買っても、20年しか住めないとしたら、40歳の買い手は60歳に過ぎません。これでは困ります。せめて90歳まで、あと30年(築80年まで)は住めるマンションでなければなりません。

それが無理ならどこかで売り抜けることが必要ですが、ここまで述べて来たような危ういマンションは高く売れないと思った方が良いわけです。逆説的には、売却するとき、まだまだ長く住んでいけるマンションでなければいけないのです。

 

 ・・・・今日はここまでです。ご高覧ありがとうございました。

 

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