第78回 中古マンションの価値を左右するのは管理組合の懐(ふところ)事情にある

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中古マンションの購入を検討される人からのご依頼で「マンション評価」レポート作成作業中に、よくぶつかる疑問があります。主に築20年を優に超える古い物件でのことですが、修繕積立金が標準的な数値を大きく下回る例が少なくないからです。

 

今日は、修繕積立金の額に潜む中古マンションの問題点について述べようと思います。

 

●修繕積立金の設定額が低いマンションには危険なにおいがする

中古マンションの売却物件情報を見ると、SUUMOであれ、仲介業者のサイトであれ、必ず管理費と修繕積立金の金額が明示されています。

 

数字を見て、70㎡の住戸の管理費が15,000円とあれば、おおむね平均値と分かりますが、戸数が僅か30戸の物件で15,000円だったら筆者は管理体制(管理人の勤務態勢というほうが正しいかもしれません)を疑います。

 

ご存知のように管理人の給与は、間接的には管理組合(マンションオーナー)が支払っています。管理人の平均給与が30万円とするなら、30戸のマンションでは1戸当たり10,000円を負担することになります。

 

とすると、あと5000円で共用部の清掃費やエレベーターと共用灯の電気代、植栽の剪定費用、機械式駐車場とエレベーターの保守点検費といった日常管理費を賄わなければなりませんが、足りないのです。そこで、管理費を上げるか管理人を置かないかの選択を迫られ、分譲時にデベロッパー(売主)はどちらかに決めます。

 

中古マンションの評価作業の中で、筆者は管理費の平均が首都圏は1㎡当たり@230円台なので、これを基準に高いか低いかを判断していくことになります。管理人を置かない「巡回方式」の管理なのだろうと推測したり、WEBサイトに「日勤」と書いてあっても「午前中だけの滞在」なのだろうなどと疑ってみたりするのです。

 

戸数が多いマンションは1戸当たりの負担が小さくて済む、つまりスケールメリットが出て来るはずです。しかし、実際は規模が大きい割には高い物件も多数存在します。

 

管理会社の委託手数料が高いのか、管理サービスの内容が濃いためか、あるいは建物の構造的な問題(共用施設が多い・エレベーターの数が多いなど)があるためか、理由は様々です。

 

ともあれ、不当な支出でない限り、管理費は不可欠な出費とも言えるものであり、収めた金額はほとんど残らず使われていく性格の費用と考えられます。

 

これに対して、修繕積立金は将来のために備蓄するという性格です。家計に例えると「貯蓄」に当たります。貯蓄は多いほど将来の不安を消してくれます。病気したときのために、家を買うときのために、一時的に失業したときのために、あるいは子供の教育費や子女の嫁入り支度になど、何があっても困らないようにしておきたい。そんな想いが貯蓄に励む動機です。

 

マンションは共同住宅なので、各オーナーが勝手に屋根や壁を修理したり、ドアやバルコニーの色を塗り替えたりはできません。

 

共通の「改修用貯金」とタグをつけた財布を用意し、みんなで面積に応じた金額を積んで行くわけです。その財布が膨らむほど、やりたいことが自由にやれることになりますが、財布の中身が少なければ、今年はできないから来年に回そうとなるでしょうし、やらずじまいのまま放置されることも増えます。

 

中古マンションの評価作業中に、危険なにおいがする物件に遭遇することがあります。月額の積立金が年数の割に異様に少ないからです。

 

ご存知のように修繕積立金は例外的に30年間変えない(見直しによって変わることはあるが)ケースもありますが、大半は漸増方式を採用しています。はじめは少なく、5年、10年といった節目の年次に増やしていくというもので、当初は5,000円、6年目から7,500円、11年目には10,000円などと増額になります。20年先には当初の3倍とか4倍に増えて行くのです。5倍に増やす計画も見た記憶があります。

 

評価(調査)依頼の物件の中には、20年を超えているのに5,000円(1㎡当たり70円)足らずというケースがあります。月額の積立金が少なくても、一時金の徴収などを以前に実施して潤沢な貯金があるというなら問題ないのですが、調べると、どうやらそうではないので、今後このマンションはどうなってしまうのだろうか? 他人事ながらそんな心配をしてしまいます。

 

もちろん、レポートの中で警戒信号を送ります。

●財政基盤がカギを握る

古くなっても資産価値が下がりにくいマンションかどうかを分けるのは、メンテナンスを適切、かつ継続的に実施して来たか、今後も継続できるかどうかにあるのですが、それはとどのつまり、管理組合の財政が潤沢かどうかによります。

 

財務状況が逼迫していれば、やりたいことができないわけです。足らなければ計画を見直して毎月の積立金を上げるとか、一時金の徴収を実行しなければなりません。その合意を得るのに時間がかかるとか反対者が多く実行ができなければ、改修工事はできないか大幅に遅延したりします。

 

それが何を意味するかは言うまでもないですね。

 

購入しようとしている中古マンションが、今後も適切な改修工事を実施していくことで建物の劣化を防ぎ、ときに若返らせ、そして資産価値を維持していけるかどうか、ここに関心を払うことはマンション選びの必須条件です。

 

その検証をする上で、カギを握るのは管理組合の財政基盤にあると筆者は考えます。買い手は「管理に関する重要事項報告書(説明書)」を仲介業者から受け取り、目を通すことになるはずですが、その中の1項目である「積立金残高」に注目していただきたいのです。

 

見方としてお伝えしたいのは、総額〇〇億円ではなく、1住戸当たりの金額です。目安は100万円以上積み上がっているかどうかです。大規模修繕には100万円は掛かると言われているからです。

 

「修繕履歴」も大まかに書き込まれているはずなので、大規模修繕を何年前に実施したかをチェックし、1年か2年前に実施したばかりなら100万円を割っているはずですが、大規模修繕の時期(12年目、24年目が一般的)が迫っていたら、少なくとも120万円以上ないと工事に踏み切れないはずです。

 

 

●滞納者が多いマンションも要注意

「管理に関する重要事項報告書(説明書)」には、管理費と修繕積立金の滞納に関しても書き込まれています。

 

滞納者が多い(金額・人数とも)マンションがたまに見られます。これが一人か二人で少額なら問題はないのですが、多額にのぼるケースがあります。

 

一般に、管理費等の滞納はオーナーの経済的破綻が理由です。しかし、破綻者が自宅を売却すれば、滞納分は整理されるものなので、滞納が巨額で長く残ることはありません。従って、少し多いなと感じたら、住宅ローンだけは辛うじて返済しつつ生活を続けているものの、管理費・修繕積立金が払えない人が何人かいて、長く滞納しているのかもしれないと想像できます。

 

あるいは、修繕積立金の値上げに反対した中の数人が、支払い拒否して抵抗しているのかもしれません。

 

いずれにせよ、普通では考えられない多額・多人数の滞納があったら注意しなければなりません。大事なことなので、原因を突き止めた方がよいと思います。根が深い場合は、購入を見送った方がよいでしょう。

 

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中古マンションを買うなら「管理組合の財政基盤」に注目して下さい。掃除が行き届いているとか、室内が奇麗などの見た目のよさだけで購入を決めると後悔することになりかねません。

 

 

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 ・・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございます。

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