お便り返し14 理事長を追い出したい!(後編) 【はるぶー】

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”前篇”の続きです。前篇はこちら。
お問い合わせのAさんの質問は再掲しませんので先に読んでくださいね。
⇒ https://www.sumu-log.com/archives/5822/

前回は具体的な”追い出し方”のはなしではありませんでした。この手のは喧嘩両成敗というか両方の見解を聞いてみないとなんともいえませんし、このブログを信じて闘いを挑んだらマンションに住めなくなったぞと言われても、はるぶーは関知しません。繰り返しですが、どうしても理事長さんを直ちにクビにしないといけない確かな理由があるのならいきなり総会で暴れる前にお金払って弁護士に相談に行きましょう。中途半端に暴れまわってしまって、Aさんのことを理事会が”敵”であると認識してしまうと、もう理事会の次期役員候補名簿に載ることは極めて困難になります。

今回は、ある人物を”理事長でなくする”ための一般的な方法論を少々。

追い出すより次期理事長を狙いましょう

理事会で議案化⇒総会で理事として選任⇒きちんと互選で理事長に選任されている理事長の”正統性”を争っても勝ち目は少ないです。もともと理事長は、理事会で選ばれているわけですから、理事の過半数を勢力下に抑えていなければ実質的には何もできません。

通常の規約であれば、新しい重要な変化は全てが理事会決議が起点になり、そこでは理事長は1票を持っているだけです。1人では重要事項はなにも決められないわけですから、議事録などをきちんとチェックしていくほかに、理事会の中に入っておかしなことをしないか見張っている方がはるかに効率的です。質問にもありましたが、理事長が管理会社とだけ相談して重要事項を決めてしまうといったことを防いで”誰が理事長になっても独裁はできない”ようにしていくことが大事です。ガバナンスを改善しなければ、また次にでてきた理事長の王国になっちゃうだけかもしれませんし・・・

輪番制をとりながら、Aさんのところの理事長は4期連続で”理事長”しているわけです。ルールとして、”立候補すれば理事に優先的になれる” マンションということになります。理事長自身が自分自身にに適用したルールをAさんに適用しないというわけにはいきません。

さて、立候補すれば必ず理事になれるというのは少なくとも今の理事会によくない点があればそれを正しやすいという点で”良い”ルールです。長い目で見れば、たった一人を理事にしないために理事は全員1年で入れ替えなさいなんて後ろ向けに組合が進むより、そのメリットを生かして、民主的に政権交代を果たしたほうがよろしいかと思います。同じ理事会にいて、互選でその理事長にAさんが勝てないとしたら・・・それはAさんの力量がそれだけだということになりますね。

幸い、Aさんには今理事の友人がいて、何人かの有志も募れるとなっています。よほど大規模なマンションでない限り、意見を同じくした理事を数人も理事会に送り込んでしまえば、理事長からみても無視できない一大勢力になることは間違いありません。うちの理事会は理事20名ですが、私は最大で8名、今の理事長は11名の同志と一緒に立候補しました。

理事会決議で理事長を解任できるか?

Aさんが理事会で多数派側になったとして、”理事会の決議で理事長を解任できるか”というと、理事長を理事ですらないように全ての地位を奪うことは、理事長さんは理事としての身分を総会決議で得ていますので理事としての身分まで奪って理事会から追い出すことは総会決議によってしかできません。これは専門家の間でも意見は一致しています。

一方で、標準管理規約準拠のマンション(理事長は理事会で選ばれると規定があり、解任についての明示的規定はない)で、理事会決議で”理事長職を解任して、平理事にすることができるかどうか”については意見が分かれています。 テレビドラマみたいに、理事会で突然動議があります!とかいって、理事長をクビにするのに賛成の人!とかで過半数でクビにできたらなんか劇的な気がしますよね。

これ私が代表している理事長の会RJC48の中でもペダンチックに議論があったものなのですが前篇に引き続き桃尾弁護士によると

『理事会における理事長解任の可否 ‐標準管理規約を前提に‐ 』
http://momoo-law.hatenadiary.jp/entry/2016/07/11/223145
では、理事会決議で”理事長の職を解くことができる”(けど規約で明確化がベター)となっています。

ごく最近の福岡高裁での判決では、管理規約に「選任」とのみ規定してあり「解任」と規定していないから、「解任」はできない(理事長解任決議無効、その後、新たな理事長が行った行為も全て無効)と判断がでているとの事例紹介が他の弁護士さんから。どうも最高裁までいくようです。

この理事会決議で解任できる論は、この分野でもってないともぐり認定の『コンメンタールマンション区分所有法』(日本評論社)の第3版で書き足されたものですが、それをわざわざ引用して主張した理事会側の主張は認められなかったとか。

いずれにしても、延々ドロドロとやりたくなければ、理事長の明示的な解任規定は規約に書いておきましょうねということになります。管理組合の考え方で、どちらを選んでも構わないわけですが、うちは総会によらなければ理事長職(より正確には複数人いる代表理事)は理事会決議レベルでは解任できないように規約の明確化を検討中です。(うちでも辞任はできます、できないのは解任)


<区分所有法の逐条解説本の定番。
この例のように最新版が必須です>

1/5集めて臨時総会を招集する方法

理事長を総会で解任しましょうという場合、通常理事長(≡多くの場合区分所有法の管理者)が招集者になりますから、住民の多くがその理事長を望まなくても理事会側からは理事長を代えましょうという総会の提案はまずでてきません。

「理事長を解任する」がテーマでの臨時総会の開催は、Aさんが全戸の1/5以上の賛同を集めて招集を請求でき、理事会が2週間以上何もアクションしなければAさん自身が総会を招集することになります。これは、区分所有法の規定なので増やすほうには規約で変更できませんからどのマンションでもほぼ可能です。

ただ、1/5以上の賛成を”理事会に知られずに内緒で”集めるってまず無理です。何かAさんが不正を暴きたいとかであれば、理事会で議決権を有する理事になるか、業務・会計監査を実施する監事あたりになれば、書類を見せろといって拒否されることはないわけですが、それなしにいきなり解任議案で総会をやって過半数を集められるかどうかになります。

実は、この組合員でも1/5集めれば総会を招集できますというのは私は結構事例を聞きます。解任とあわせて、次の理事長の選任も議案にしないと誰も管理組合の代表者がいないというなかなか楽しい状態になりますが、さすがにこれで解任するのにはちゃんと理由が要りますよね・・・

解決は前向きに

忘れてはならないのは、なにかを解決・改善するための手段として、どうしても現在の理事長が邪魔になるのであれば取り除くしかないですが「理事長をクビにする」のはその道のりの上での『手段』であって、『目的』ではないことです

多くの場合、過去のその理事長さんの責任を追及したり、すでに支払ってしまった管理費だの工事代だのに責任があるとか追及しても殆ど意味がありません。戻ってきたとかまず聞いたことがないので。

理事会はいくらでも外向きに解決に向けてハードな交渉をしなければならない相手がでてくるのに、内紛に理事会の限られたパワーを使うというのは、完全に後ろ向きですよね。

さっさと民主的な方法によって、自分が理事長にとってかわってしまった後で、問題点があったのであれば直せばよいわけで、多くの理事会の問題は責任を追及するよりも、いかにさっさと解決して先に進んでいけるかのほうに重点がありますし、”今からでは間に合わない”という問題はめったにないものです。

管理に関わる法律に詳しかったり、規約を熟知しているなどの管理組合的な知識は、理事会を護るために使うのであって、理事会を倒すために身に着けるものではない、理事長の会(RJC48)の代表者としては思っているわけです。

!! 重要 !!
本ブログの内容は、著者の個人的見解であり、著者の所属するマンション管理組合、勤務先、RJC48も含めその他所属する一切の団体の意見、方針を示すものではありません

ABOUTこの記事をかいた人

マンションのモデルルームがあるとたとえ外国でもふらふら入ってしまったり、管理組合の理事会には思わず立候補する人って多いですよね。多いはず!! それなのにあんまり管理組合の苦労とかのブログって見ないので立ち上げてみました。世の中に多い管理士系ブログとは一味違う、理事会側から見たマンションの運営を中心テーマに書いていこうと思ってます。

9 件のコメント

  • 100世帯マンション管理組合理事長 より:

    >うちは、規約上”総会”によらなければ理事長職は解任できないようになっています。

    公開されている貴管理組合の管理規約並びに同附則を見た限り、そのような規定にはなってません。私のマンションでも管理規約上は、職制の解任は総会決議の必要はありません。
    「理事長」は理事の職制ですから、選任も解任も理事会でてきます。理事長の解任は職制の「解職」「罷免」であって、「理事」の身分剥奪とは異なるからです。
    「理事」の身分は総会決議で付与(委任契約)されるので、その身分の剥奪(委任契約解約又は解除)も総会決議によらなければなりません。

    >今年こそはやめさせたいのですが、どのような手続きが良いですか?

    先期理事長の続投を阻止するために自分が理事長になって取って代わるのでは権力争いの様相を帯びます。それよりも組合員として理事長宅を訪問し、直接面と向かって「何で何年も理事会に入りびって理事長、他の理事に譲れよ。」
    と詰問風に言えば済みます。そしてマンション内ですれ違うたびに理事長を睨み付けるのです。
    ここまでされたら、普通なら引きます。
    これだと「自分が理事長になりたいから引きずり下ろす」と解されることはなく、一組合員としての冷静な眼で見た忠告の形になります。理事に成らずに続投理事長を退任に追い込む実績に基づく解決策です。



    • はるぶー より:

      さらについていたコメントについては非公開・削除の扱いと
      させて頂きました。 新しい視点の提示であるとは思いませんでしたので。
      お返事も特に必要とは思っていません。
      100世帯さんとうちは同じマンションではないですからね。

      書いたようにうちには事実上理事長という人は存在しません。
      (便宜的に、理事会の議長と、総会で委任状を預かる人として定義はしていますが)
      4名の代表理事による合議制に3年前から移行しているんですよね。
      法人ですので、管理者というのは存在せず、一方で理事会は必置です。
      管理組合の方針に反対だとすると、全役員に対して解任決議をかけるしか
      ないように理事全員の責任としているわけなので、個別の代表理事を攻撃対象から
      守るような訴訟対応費用のD&O保険への加入や、解任規定の総会限定への明確化
      などはうちにとっては必須のものです。 
      一方で、それをほかのそうでない設定のマンションに強要するつもりは全くなくて、
      よそはよそで好きにやってよね~とか思っています。

      自分と違っているとどうも・・・という「一神教的」な考え方の人は理事長の会
      RJC48でも多いのですが、そのマンションの理事会をやったことがなけば
      あるマンションの方針が適当かどうかは誰にも判断できないと思っています。

    • はるぶー より:

      よく規約を読みこんでいただいてありがとうございます。確かに現規約ではなく、今後の規約改定の話とごっちゃにしていますね。うちの規約も標準管理規約からスタートしていますから、現行規定に理事長の解任に関わる規定はありません。

      うちは法人化の際に複数代表制に移行していて、代表理事は現在少なくとも4年程度の経験のある人が勤めていますから、現在の理事会方針などに不満がある場合事実上その全員を代表理事からはずさなければなりません。うちは、理事長を事実上なくしてしまう一方で、副理事長の権限を拡大、理事会全体としての権限も大きくとる一方で、理事会がしてはいけないことを細則などに数多く書きこんでいく形です。要は理事になってやりなさいよという考え方を前面に押し出すものなので、理事は訴訟対応のD&O保険に入るなどその立場を護る方向で、かわりに思い切ってやってくださいで進めてきています。

      福岡高裁平成28年10月4日判決は、管理規約に「選任」とのみ規定してあり「解任」と規定していないから、「解任」はできない(理事長解任決議無効、その後、新たな理事長が行った行為も全て無効)と判断したそうです。もとの福岡地裁久留米支部平成28年3月29日判決も同趣旨との情報をある弁護士さんから伺いました。。新理事長が行った行為全無効となると混乱が避けられないこと、理事長一人をクビにしてもうちの場合あまり変わらないことから(理事長と意見の近い立候補理事が過半数を占めています)、今回の総会で、代表理事からの解任(平理事に落とす)は明確に総会決議とする方向に規約改正を検討中です。
      通ってはいないわけですから、現時点では”理事会決議”で理事長でなくすることができるかどうかは不明確というべきですね。 ブログのほうを訂正しておきまました。

      なお、規約に明記すれば紛れはなくなるわけで、理事会決議で理事長でなくせるかどうかはどちらを選ぶのもそのマンションの自治の範囲内であって、ほかのマンションがどうするかはマンションごとに選べばよいので、違う設定を指向するマンションを否定するものではありません。事実上理事会での解任が成立するようなら、理事長的にはなにひとつ通せないわけですから、辞任されるのではないかなぁとも思うんですよね。辞任勧告決議をするくらいは理事会の自由でしょうし、うちでも幽霊理事に対して実施しています。

      後半部分は、うちは理事長が1個人と会うということはしませんから違和感があります。100戸と500戸では全く方法論が異なるかもしれませんね。 ”理事長をだせ”とか”理事長の個人宅”を訪問するといった相手は一定数現れますが、うちは一切対応をしていません。 理事会に尋ねてきて、発言許可をとったうえで発言されるのであればともかく、理事長の個人宅を訪問するなどとんでもないことです。私も理事長のときに何回か訪問者がありましたがドアもあけていません。

      なぜなら、理事会側のルールとして、同じブロック(私だと近隣の28戸のみ)から選出された理事が、要望・クレームなどを取り次ぐルールになっているからです。 文句があるなら、まずその人のお世話係になる理事にいってくれがルールであって、レストランで社長を出せ!と怒っている客相手ではありませんが、毅然とした対応が必要だと私は考えます。理事会に発言しにおいで、そこで理事全員の前で会おうぜというと来ないのはヘタレだなぁとは思ってます。(過去うちに怒鳴り込もうと来た人全員が、おいでと言っても理事会にはきませんでした)

      公人と私人のけじめはしっかり相手にもつけてもらいますが、これはあくまでもうちのルールです。100戸ならあるいは違うのかもしれませんが、理事長個人宅を訪問して脅せみたいなことは私は手段としてはとりませんね。

  • 100世帯マンション管理組合理事長 より:

    そうですか。マンションによって運営に違いがありますね。
    でもそれだと理事長はまるで雲上人扱いで、取次理事の資質にもよりますが理事の個人判断で握り潰されて理事長に伝わらない恐れがありますね。
    うちの場合は、理事長は部屋番号・携帯・メアドを公開して「来る者は拒まず」の組合員の下僕の精神で運営しています。

    • はるぶー より:

      100戸でも、2000戸でも理事長は一人です。
      そこを考えれば自ずとどうすべきは見えて来るとは思います。

      • 匿名 より:

        管理組合は会社組織ではありませんが

        それに準じるものと考えて

        大きな会社でのガバナンスを重視する立場がはるぶー

        小さな会社の社長はなんでも処理しなければいけないのが100世帯理事長

        大きな会社なのに人望でなんとかもっているのがミッキー

        わらわら(*^_^*)

        • はるぶー より:

          戸数や問題の発生頻度によって理事長が、直接対話されるのを認めないと
          いうわけではありません。一方で500戸ともなると”個別住戸”の問題を
          理事長が処理すると、500戸の問題は扱えません。当然に後者がより重要
          ですから23人も役員が18のブロックにわかれて必ず選出されているので
          どのブロックの当番理事がうけとめて、上にかかる手間をなくすべきが
          うちのマンションの人の配置思想です。 でなければブロックごとに理事の
          選任義務を置く理由もないですし。

          ま・・・私には人望はありませんからね ミッキーさんと比較されれば
          ずっと彼のほうがいい人ですよ d( ̄  ̄)

  • ワンダーランド より:

    お疲れ様です。
    渋谷区 秀和のオーナーです。

    議決権行使書を使わず(知らないのでなく、必要ない、と否定)、館内、館外問わず(暴力を含む)揉め事を起こしては、表面化すると、常に「事実無根!!」でふたをする、現執行部(約30年 継続)に 辟易しています。

    現居住者 または 自ら使用する(セカンドハウス?とか 事務所利用?)のみ理事に候補できる(規約)があるのだから、居住所有者が連帯して、理事に立候補し再任を食い止めればいいだけ、と単純に思うのです。

    約300世帯に対し、執行部は監事含め6名。2%だけで動議し、理事長一任 委任 を利用して「圧倒的多数」として可決する。98%が 無視される構造を、50%以上が「NO」と意思表示しない限り 変えられないのでしょうか?

    長くDVDに接する「される側」は 心まで浸食され「する側」のいいなりになる。

    このような状態でも「自治法」だから、、しかたないのか?
    駆け込み寺 とか おかみに直訴 とか 逆転一発ホームラン とか? 場外乱闘でもいい気がします WW

    いろいろなケースを見聞きしている はるぶーさん は どのように思われますか?

    • はるぶー より:

      難しいですね。当日に動議でその場で議案を本質的な意味で変えてしまっているとかが
      ”証拠”としてとれれば大きいですが。議案の議決範囲を完全に変えないかたちでの
      動議は不可能ではないので、個別に内容を見る必要があると思います。
      ・・・例として立候補者が役員数上限に達していない場合に、当日議場での立候補者の
      追加などは、”元の議案の全員の承認”と別には許されるとなってます。

      議決権行使書は今回なされたように、”自作したもの” を受け取らないのは違法ですが、
      理事会側で作成して最初から添付していないから違法無効ということにはなりません。

      まず関心を持っている人を1人1人実名で集めて全戸の20%を超えることろまで
      増やすことです。20%招集で総会を招集できるようになります。

      他には、固定化された執行部のやりかたに納得できない人に立候補を”誰にもわかる”ように
      ・・・全戸に立候補意思を何人か連名で投函するなど・・・して、それが無視されたとかの
      立候補者を排除した証拠をとる手もあります。

      ただ相手にも弁護士がついていますから、反対派の人にも専門家をつけないとこれらは
      難しいように思います。 理事全員+監事までが完全固定で、理事の選任の議案すら存在
      しなくなっているようなケースでは、変革は”理事会の中”に人を送り込まないと書かれている
      通りほぼ不可能に思えます。 委任状が半分あればほぼなんでも可決できるので。
      総会に何人実参加しているかなども大事でしょうね、

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