第45回 「買い手を近視眼的にさせる売り手の策略」

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このブログは、マンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介しようというものです・・・原則として毎月5と10の日に投稿しています

 

 

ご相談者からのメールを読んでいると、文章の行間から感じ取れることがあります。そのひとつが、「売り手の巧妙な策に乗せられてしまったなあ」というものです。

今日は、そのあたりのことについて述べようと思います。

 

●モデルルーム活用の顧客誘導

どのような商品でも、売り手は買い手の購買意欲を高めることに知恵を絞ります。商品のコンセプトやクォリティはもちろんのこと、パッケージのデザインを工夫する、広告の展開や展示方法を変える、価格を見直すといった様々な策が講じられています。

 

マンションでも同じことですが、モデルルームを使った商品展示が最も象徴的です。車の販売では同じ車種でもデラックスタイプを展示しますが、それと同じで、たくさんある間取りタイプの中から、広くて見栄えのするタイプを選択し、かつ、リビングに続く個室の壁を外してより広いリビング空間を創り出していたりします。

 

映画のシーンに出て来そうな洒落た洗面化粧台、今の風呂とは比べ物にならない広くて心地良さそうなバスルーム、最新設備が盛り込まれデザインも素敵なシステムキッチン、寝室のウォークインクローゼットなど、ここに書ききれないほど、魅力あふれるモデルルームを見せられて感動しない人は少ないことでしょう。

 

そこに家具・インテリアでの演出が加えられているので、見学者の住みたい、買いたいという欲望は強く刺激され、絶頂に達します。購入することになる間取りタイプがモデルルームとは全く異なるものであっても、モデルルームによって見学者は売り手のとりこにされてしまうのです。

 

自宅に置いてある、あの家具はどこへ置こうか、それとも新しい家具に買い替えた方がよいかなあなどと考え始めたら、もはや買った気分になっている証拠です。

 

このような商品展示方法は、業界では普通に古くから行われているもので、読者の多くもご存知のことと思います。

 

●顧客誘導策は映像でも

マンションという商品は不動産ですから、土地すなわち場所と一体のものです。場所の魅力をアピールしたい売り手は、シアタールームを用意し、音声と映像によって街の魅力を解説します。

 

建設地の街を知らない人はもちろんのこと、比較的なじみのある見学者も、映像を使って解説されると、魅力を感じたり見直したりすることになります。

 

その説明には嘘飾はないかもしれません。しかし、街の全てを語っているわけでもないのです。営業担当者の説明も同じなのですが、利点・長所の類は針小棒大に説明します。しかし、都合の悪いことは黙っています。ウソはいけませんが、ダンマリは許されるからです。

 

いずれにしても、あの手この手で顧客を買いたいという方向へ誘導します。その仕掛けは驚くばかりです。

  

●木を見て森を見ないための失敗

このようにして、買い手は売り手の策略にまんまと嵌まり、買いたい気分が増幅されて行きます。中には、舞い上がってしまい、営業マンのペースに乗って購入申込書を提出してしまう人も少なくありません。

 実は、そうなってしまっても結果オーライのこともあるのです。衝動的な買い物が全部失敗と決まったものでもないからです。

 

しかし、物事の判断で大事なことは大所高所から俯瞰すること、木だけ見ないで森を見ることです。近くばかり見ないで遠くも見ることや、前からも後からも見るといった複眼思考なのだと思います。

 

間取りも最新設備にも感動し、「予算的にも無理はない。自分たちはこのマンションを買うことができる」、そう思った瞬間から、見落としてはならない何かを探そうとする考えはどこかに置き忘れてしまったりします。

住むための準備に心を奪われて他が見えなくなってしまうのです。近視眼的な状況に陥るのです。

 

失敗事例を少し挙げてみましょう。

 

①金利が上がるからと慌てたため細かな部分に気付かず契約した。完成内覧会のときになって、下がり天井の大きさにびっくり。こんなに天井が低いとは思わなかった。(モデルルームにないタイプを購入した人)

 

②高速道路が近い場所だったので気にはなっていたが、バルコニーとは反対方向であったし、営業マンが高性能の防音サッシを使っているから大丈夫だと言うので契約してしまった。完成してから中に入ると、音がどこかへ反射してバルコニー面にも届くと知る

 

③周辺環境の素晴らしさ、マンション敷地内の公園・緑地、散策路などランドスケープの素晴らしさに感動し、価格の安さにも惹かれて購入したが、毎晩帰宅が遅い主人のタクシー代に悲鳴を上げる事態に(バス便マンションを購入した人)

 

④都心に近い割には広い間取りで、かつランニングコストも安いことに魅力を感じて契約したが、安い物件は安いだけの値打ちしかないと後悔した(倉庫跡地を開発したマンションを購入したが、学校が遠く、環境も良くないと知る)

 

⑤決算直前だから200万円値引きするという誘いに乗って契約してしまったが、その後500万円引きのモデルルーム販売が何室も。地団太を踏む

 

 

このような失敗例は、数限りなく存在します。熱くなったときは誰もが陥りやすいことでもあります。肝に銘じておきたいことは、「慎重に・冷静に」です。

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。

 

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◆三井健太のマンション相談室

三井健太はマンション研究家。マンション業界OBとして業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介しています

また、個別の物件の価値判断やご購入における諸問題について個別のご相談を承っております。営業担当者には聞きづらいこと、聞いても立場の違いから客観的で信用できる回答を期待しにくいことなどに関しても秘密厳守でお答えしています

別サイトのブログ「マンション購入を考える」も是非お目通し下さい。500本以上の記事があります。

今週のご紹介マンションは、次の5物件です。

NO.112ドゥ・トゥール/NO.113ザ・パークハウス花小金井フロント

/ NO.114シティハウス四谷津の守坂/NO.115プラウド府中セントラル/NO.116ブリリアタワー上野池之端

 

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