第32回 「築40年マンションの着眼点はここだ!!」

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 最近、中古マンション流通に新しい波が来たと感じています。リノベーション物件の増加です。多くが築年数30年を超える物件なので、流通戸数全体に占める割合としては大きくないものの、着実に実績を伸ばしています。

  今日は、リノベーションマンションえを考える上での注意点についてお話ししようと思います。

   

●リノベーション物件が増えている。その理由の一端

理由の全てと時代背景まで述べると長くなるので、今日は一部に限定して述べることとします。

  一般に、リノベーション物件は割高なものが多いことが明らかです。業者が大きな利益を目論むためです。

  中古マンションを仲介しても手数料は最高で6%少々、3%程度にと留まることが多いのですが、個人の所有者から安く買い取り、フルリフォームして付加価値を高めれば儲かると考えての事業化、それがリノベーションです。 

  この事業を展開するのは仲介業者が多いのですが、中には大手デベロッパー自身やリフォーム業者も見られます。新規参入業者も急増しているようで、大手も目立つようになってきました。

 

東急不動産は、超高級マンションの1棟リノベーション物件を手掛けています。

 同社は、初となるマンションリノベーション事業の新ブランド「MAJES(マジェス)」を立ち上げ、その第1号物件となる「マジェスタワー六本木」の販売を20161010日(土)より開始したと報じています。

 「マジェスタワー六本木」の概要

●総戸数:83

●構造・階数:鉄筋コンクリート造27階地下3階建

●竣工:20062月(築9年)

●先着順4戸の専有面積:42.62118.90

●価格:8,390万円(1)41,750万円(1)

     2号案件も麻布十番で準備中のようです。

 

 他に代表的な企業を紹介すると、大京穴吹不動産(旧、大京リアルド)が挙げられます。過去3年のリノベーション中古の販売実績が1,100戸を超えたらしいのです(内部情報を入手)。累計1,100戸はトップクラスと見られます。

  他にも、住友林業、三菱地所レジデンスなどが参入済みです。

  今後も、1棟単位のリノベーション物件と個別買い取りのリノベーション物件とが混在しながら市場規模を伸ばして行くに違いありません。

 

●リノベーション物件の値打ち

 リノベーション物件を高いと感じながら買うとするなら、そのメリットは手間要らずにあるはずです。

  中古マンションを買ってリフォームするのは、プランニング、工事費の見積もり、業者選定、発注などの各段階において、打ち合わせを繰り返し行う必要があるため、その時間とエネルギーは膨大で、中々大変です。

  それらが不要で、代金決済後すぐに入居できることが「売り」のリノベーションは、多忙な買い手にとっては有り難いシステムと言えます。

 

最近の事例から、リノベーション物件を高いと感じる根拠をお見せしましょう。

 お断りしておきますが、業者が利益を貪っているという誤解(そういうケースもあるのですが)を与えることが本意ではないので、必ずしも割高という意味ではありません。他の中古事例と単純比較で高いということです。

 

これは、赤坂近辺の中古マンション成約価格(国土交通省のデータ)を比較したものです。

➀赤坂見附 9 8,300万円 2LDK 80m² 昭和45年竣工=342万円/坪 

②赤坂見附 9 6,500万円 2LDK 80m² 昭和45年竣工=@268万円

③乃木坂  8 4,100万円 1LDK 70m² 昭和39年竣工=@193万円

④乃木坂  8 4,700万円 2LDK 90m²  昭和39年竣工=172万円

 

 ※事例➀と事例④では、同じくらいの年数でも2倍の価格差がついています。 このような差は、単に駅からの距離だけではなく、階(眺望・日当たり)、スケール感、グレード感、環境(騒音など)、リフォームの程度(室内の状態)などによって生まれます。 

  フルリフォームしたばかりの住戸であるとか、共用部の大規模改修が最近終わったばかりという場合は当然高くなります。そうでない物件は安くなるわけです。

 

次は、世田谷区(同)の例です。

 千歳船橋 15 1,000万円 1LDK 45m²  昭和48年竣工=73万円/坪

②千歳船橋 8  3,600万円  3DK  55m²  昭和50年竣工=216万円

③千歳船橋 15  4,000万円 3LDK  80m²  昭和43年竣工=@165万円

④千歳船橋 15  3,500万円 3LDK  70m²  昭和43年竣工=@165万円

 

 ※事例のように極端に安い物件もあれば事例②のように3倍もする物件もある。これが築年数の長い中古物件の実態です。事例②は駅から10分以内の立地が評価されたのかもしれません。それにしてもは随分安いですね。

  このような価格差も、単に駅からの距離だけではなく、階(眺望・日当たり)、スケール感、グレード感、環境、リフォームの程度(室内の状態)などによって生まれます。

 

●価格の問題より注目点は築年数

 昭和56年(1981年)以前の「旧・耐震基準」によって建てられたマンションは、その耐震性に懸念が残ります。そのことが中古流通の妨げになっているものと思われますが、それだけではなく、見た目の古さが購買意欲を減退させてしまうことに大きな要因があるとされます。

  これは新耐震基準のマンション(概ね築後35年未満)でも同じことが言えるのですが、共用部の老朽化、デザインの陳腐化なども重なるだけに、40年以上のマンションは、室内が汚く古いと売れないものです。

  そうした物件が安く転売され、業者によってお化粧され、飾り立てられると、たちまち売れてしまうといいます。見た目がいかに大事かのエピソードでもあるのですが、買い手の立場では、新築のモデルルームと見まがうほどの美しさに、つい舞い上がってしまう人も少なくないようで、、リスクの高い買い物をしてしまいがちです

 

 筆者は、不遜ながらマンション購入者の背中を押す役割を担っているつもりですが、ときおりは足を引っ張ることもやむを得ないと考えています。こうした旧耐震の物件を買おうとしている相談者のケースが、その端的な例です。

  新耐震基準のマンションであることを契約寸前まで隠し通し、ついには契約させてしまう業者の存在を知っているだけに、特に忘れず指摘しています。

  40年、50年のマンションが全て「耐震性」が劣っているわけではありませんが、「大丈夫」と言える根拠も発見できない以上は、注意喚起をやめるわけに行かないのです。

 

 過日も、立て続けに「舞い上がっていた」人に冷や水を浴びせ、購入を断念させてしまいました。

  筆者がボールを投げ返した言葉があります。

「管理に関する重要事項説明書」をご覧になっていませんか? 耐震診断を実施したかどうかの記載が必ずありますのでご確認ください。

 「売買取引に係る重要事項説明書」が仲介業者から交付されますが、契約の前日までにメールで送ってもらって読みましょう。そこに、耐震診断の有無という項目があります。無しなら問題です。有りとあれば、次に『添付の耐震診断結果報告書を参照ください』と記載されます。そちらもご確認ください。

 旧・耐震基準の建物の全てが、耐震性が劣る建物とは言い切れないのですが、専門家の診断結果がない限り安全とも言えないのです。

 

●老朽化したマンションの問題点

<耐震性の問題>

 既に述べた通りですが、少し補足しておきます。

 

 新耐震基準と旧耐震基準との違いを簡単に言えば、以下のようになります。

 新基準では、地震による建物の倒壊を防ぐだけではなく、建物内の人間の安全を確保する、すなわち人命に危害がないことに主眼が置かれました。 旧基準の「震度5程度の地震に耐えうる住宅」との規定から、新基準では「震度6強以上の地震で倒れない住宅」と変わったのです。

 

 また、東京都の場合、平成24年4月に、都民が安心して建築物を利用することができるように地震に対する安全性を示す「東京都耐震マーク表示制度」を創設しました。以下の3つに区分され、耐震診断を実施し、安全と確認されるとマークが交付されます。適合していれば玄関付近にマークを取り付けられます。

  【3つの区分】

 「新耐震適合」―昭和566月以降に建てられた建築物

 「耐震診断済」―耐震診断により耐震性が確認された建築物

 「耐震改修済」―耐震改修により耐震性が確保された建築物

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(安心マーク:画像は東京都のHPより)

  

<髙い修繕費>

 マンションの管理費、東京では平均して15,000円ほどかかります。広さや管理体制によって変わるのは言うまでもないですが、80㎡で25,000円といった例は少なくありません。

  もうひとつのランニングコストである修繕積立金は、新築当初は10,000円未満が多いですが、30年くらい経つと管理費と同じくらいになる計画が多いようです。現時点で築30年を過ぎたマンションでは35,000円、40,000円といった例も珍しくありません。

 

 新築マンションを販売するとき、「長期修繕計画書」を用意するのが一般化しており、大抵の場合、30年先まで見越して金額が明示されています。その額は段階的に増えて行く形が多いのです。

  一例を紹介すると、都内の新築マンション66.67㎡の場合で

初月~3年間:平均5,800

4年目~6年目:同9,800円(+69%)

7年目~9年目:同13,800円(+41%)

10年目~12年目:同17,200円(+25%)

13年目~15年目:同20,700円(+20%)

16年目~18年目:同23,500円(+14%)

19年目~21年目:同26,400円(+12%)

(以下略)28年目:同29,800円(当初の5

 

 築後30年以上のマンションを最近購入した人、もしくは購入時に築10年のマンションでも20年住み続けた先には、毎月30,00040,000円が黙ってかかるコストということになります。

  マンションの場合、月30,000円として年間36万円、20年で720万円を積み立てたてたとしても、共用部分の修繕にしか使えません。別途、室内の改修・更新費用が必要になるのです。

  マンションは、築40年を過ぎたあたりから補修、補修の連続で、住みづらい状態が続いたりする懸念があります。

 しかも、修繕積立金の負担が小さくないのです。せめて管理費だけでも負担が消えないかと感じるようになるのではないでしょうか。

 

 60歳で新築マンションを購入したような場合、90歳でも築後30年ですから問題はないでしょうが、40歳くらいで築20年の物件を永住目的で購入したような場合、70歳のとき我が家は築50年を迎えます。

 としたら、既に管理費の1.5倍か2.0.倍の水準になった修繕費の更なる高額積み立てを覚悟する必要があるかもしれません。

 

 マンションのメンテナンスは、社会的ストックでもあるマンション、建て替えが簡単にできないマンションといった認識を前提にすると、長期的な視野で計画しておくべき重要なテーマです。

  一方、築40年を超えるような中古マンションは分譲当時に積立金が設けられていても、現在のような高額ではなく、管理費の20%程度などと根拠の薄い決め方でした。そうしたマンションも何年かして「長期修繕計画」を立案し、伴って積立金を値上げする動きも広がって来ました。

  しかし、その金額が十分でないところも多く、今後は一段と積立額を増やす必要に迫られて来る場合が考えられます。その合意形成ができなければ、適切な時期に改修工事が行なえず、結果的に劣化スピードが増して資産価値が低下してしまうかもしれません。

 

 

<建て替えが難しいマンション>

 マンションは築後40年、50年ともなると、建て替えが話題に上っている可能性があります。そのようなマンションを買おうとしている人も少なくないことが分かっています。建て替えを期待して50年物件を狙っているという買い手さんもあるようです。

  しかし、民間マンションに限れば、建て替えは不可能に近いことと承知しておくべきだと思います。建て替えができるとしたら、容積率が大幅アップして建て増しが可能になるとか、隣接する所有者との共同開発や一体的な再開発などですが、それとて利害の一致までには長い時間がかかるのです。

  そのとき、「工事中どこかに仮住まいし、完成したら戻って来る。そんなのは面倒だ。いろいろ不具合が出ていることは承知しているが、このままでも十分住める。私はもう自分の寿命も終わりが近づいているので、静かに暮らしたい」。そう言って建て替え計画に反対する高齢者も多いようです。

  一方で、入居者の中には中古マンションとして購入して来た若い世帯もいて、建て替えに賛成する人もあります。

 

 しかし、建て替えには当然ながら多額の費用がかかります。これは積み立てられていませんし、入居者個々のふところ具合は異なります。費用の捻出が最大の課題に浮上するのです。

  何十回も住人同士の話し合いが設けられ、建て替えの合意を得るのに10年も15年もかかるのが普通です。少なくとも過去はそうでした。今後は建て替えが促進されそうな法改正もあったので、少しはスピードアップするでしょうが、たやすくはありません。

  一戸建てなら自分の意思だけで全てを決められるのに、マンションは何と煩わしいことか。でも、いつかそんな日がやって来るのです。

  建て替え問題で話し合いが繰り返される途中、着工に至らないまま他界する人も出て来ます。それでも、死ぬ直前まで快適な暮らしができるのであればいいのですが、建物の不具合が多く、ストレスの溜まる日々を送ることにならないとも限りません。

  としたら、晩年の煩わしい問題に巻き込まれないうちに逃げ出した方が賢いかもしれません。自分の意思だけで永住できる一戸建てへの転居や、新しいマンションへの買い替え、老人ホームなどへの入居などを決断することが必要になるかもしれません。

 

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