第28回 転勤が多い人のマンション選び

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転勤が予告なしにやって来る可能性のあるサラリーマンにとって、マイホームを購入するタイミングの判断は中々難しいものです。

 先月お目にかかった方も全国を転勤して歩いて来たので、マイホームを取得するチャンスがなかった。5年後には定年を迎えるので、東京に戻った今が最後のチャンスと思い、精力的に探しているとのことでした。

 転勤はサラリーマンの宿命とはいうものの、悩ましい問題です。買ったとたんに辞令が出て、一度も住まないで転勤したという笑えない話もあることを知っているからです。

 転勤になれば、せっかく買ったマイホームを賃貸するか売却するかになるわけですが、そのためには貸しやすく売りやすい物件を買うべきと考え、この物件はどうかと悩むわけです。

 筆者は自分の経験も踏まえて、最初から転勤前提のマンション選びをお勧めしています。今日は、転勤族の方のためのマンション選びの極意をお話しします。

 ●最後は東京圏に戻りたい人は

この話は、定年後は東京圏に定住したい人を前提にしています。転勤先では社宅・賃貸マンションに住み続ける(新たな購入は考えない)ことが前提です。

 

東京圏で購入したマンションは転勤後も売却しないこととします。早い段階で戻って来たときに住むことができるからです。

 

もし、定年まで地方回りになってしまったときは、必要に応じて処分を考えるとしても、ずっと先のこととします。

 

その時期が定年時なのか、それとも定年の5年前なのか10年前なのか?そのタイミングは、賃貸中の自宅マンションの状態や売却見込み額によって、或いは住みたい場所を変えたいなど、事情に応じて検討すればいいのです。

 

「基本は当分売らずに賃貸する方がよい」というのが筆者のお勧めです。

 

竣工が1年以上も先といった物件を買った場合は、「せっかく買った家に、一度も住まずに他人に貸すなんて」という事態になるかもしれません。しかし、ここは割り切るに限ります。

 勿論、竣工と同時に買い値を上回る高値で売れるような絶好のタイミング・絶好の物件と縁ができる人もあるでしょうし、そのような場合は売却してもいいのかもしれませんが、逆に、そのような人気・優良マンションは二度と手に入らないかもしれないと思うべきかもしれません。

 このような物件の場合でも、目先の利益にこだわらず「価値ある資産を持っている」と考えるのが良いと思います。マイホームを確保しておけば、「最後には帰る家があるという安心感」を持つこともできるからです。

 ●地方の転勤先で買うとしたら

「社宅住まいはもう嫌だ」という思いから、マイホームを買いたい人もあることでしょう。このため、東京圏のマンションは転勤と同時に売却し、転勤先で新たにマイホームを買いたいと考える人もありますが、あまりお勧めしません。

 

何故なら、地方都市のマンションは、その都市一番の物件であっても購入価格より高値になることは殆んどないからです。現在のような時期には、高値になることもないわけではないのですが、計算(期待)はしない方が良いと言っておきます。

 まあ、確実に値下がりすると覚悟しなければなりませんね。何事も例外はあるとはいうものの、別格とも言えるような価値ある物件との縁を結ぶことは極めて難しいことです。

 従って、定年後に東京圏でマイホームを持ちたいというとき、地方で買っていた自宅を売却しても役に立たないことが多いので、十分な貯蓄をしておくことが必須になるでしょう。

 それでも、地方都市で購入するとしたら、次のようなメリットがあると考えられます。

 それは、地方の物件は東京圏に比べて信じられないほど安いという点です。

 従って、予算に余裕ができます。東京では70㎡くらいが限度だったとして、地方なら90㎡クラスに楽々手が届くこともあるでしょう。

 予算を少な目にして、余力を残すことも可能になるわけです。そうすることで、定年後に東京圏で購入するときの資金にプラスとなるかもしれません。

 ●賃貸しながら所有する意義

さて、「転勤になったら賃貸する」と、どのようなメリットが生まれるのでしょうか? 

 

マンションを買えば、当然ながら頭金、登記料などのイニシャル諸費用、毎年の固定資産税や毎月の管理費・修繕積立金などは自分で負担することになるものの、転勤後の住宅ローンは見知らぬ他人(賃借人)が家賃の名目で払い続けてくれます。

 

そうして、転勤で地方回りしている間に、いつの間にか住宅ローンは大幅に減っていきます。これが大きなメリットなのです。

 例えば、35年返済のローン4000万円を平均金利1.0%で組んだとします。10年後、残債は約3000万円です。1000万円の元本返済を金利ともども、他人が肩代わりしてくれたようなものです。

 ちなみに、このローンの毎月返済額(元利均等・ボーナス返済なし)は、113,000円ほどです。

 東京圏では、どのような物件を購入したとしても、このくらいの家賃は軽々と取れるので、仮に空室期間ができたり、リフォーム費用が必要になったりしたとしても、それに充てる分として別段(別枠)貯金ができるはずです。

 ●値下がりしない物件をうまく買えたら

例えば10年後に売却することにしたとしましょう。そのとき、手元には大きな清算金が残ります。清算金とは、銀行に残債を一括返済する資金のことです。

 当然、売却代金の中から返済するわけですが、もし購入価格と変わらない値で売れたら、頭金部分は全額戻って来ますね。その上、10年間に減少した1000万円のローン分が加わります。

 仮に5000万円で購入したとし、10年後に5000万円で売れたとします。(説明を簡単にするため、売却時の仲介手数料などの譲渡費用は織り込み済みとしておきます)

 すると、5000万円からローン清算金3000万円を差し引いて2000万円が手取りとなります。

 一時期は住んでいたとして、その間は家賃収入がなく、自分で返済をしていたわけですし、売却時まで固定資産税等も払い続けて来たので、それらを厳密に計算すれば違って来ますが、大雑把に言うと1000万円の頭金が2000万円になって戻って来たというわけです。

 こんな妙味ある、そしてリスクの小さな投資はどこにもありません。

 無論、これの前提は「値下がりしなかった場合」の話です。仮に2000万円も値下がりして3000万円でしか買い手がつかなかったとすると、ローン残を清算して終わり、すなわち頭金部分も全く戻ってこなかったという惨憺たる結果となるわけです。

 ところが、東京圏では10年後に5000万円のマンションが3000万円に40%も値下がりすることは、バス便物件以外は殆んどありません。いいえ、多分ないでしょう。

 ともあれ、できたら少しは値上がりするような物件を買っておきたいものです。最悪でも元値です。いえ、元値でもいいのです。

 ●定期借家契約によって退去を担保する

売却するときは、賃借人の退去が条件です。入居したままでは、自分で住みたい人には売れません。ターゲットは投資家に限られてしまいます。

 投資家は利回りが良いこと、すなわち価格はできるだけ安いことを目指すので、希望の値段では売れないと思わなければなりません。

 退去を確実にするためには、法が保証する契約更新なしの期限付き賃貸契約、すなわち「定期借家契約」が必須です。

 転勤直後は別としても、入居者が入れ替わるときなどに契約条件を変えるといいでしょう。幾分、賃料は下がりますが、確実に計画を実行したいときには必要な処置となります。

 「定期借家契約」は、転勤から戻り、自分で住みたいときも有効です。一旦は社宅に入ることがあったとしても、ほどなく自宅に移転することが可能になるのですから。

 ●物件選びの考え方

「どうせ転勤になってしまうのだし、マイホームとはいえ、仮住まいと変わらない。戻って来るのはいつか分からないし、戻って来たとき、知らない人が長年住んだ家にはもう住みたくないから売るつもり」という考え方の人があります。

 このような人には、購入物件の条件について以下のように助言します。

     投資目的でマンションを所有したとします。そして、投資目的で購入したマンションに、ちょっとだけ住んでみようと考えるのです

     投資目的だから、あまり欲張りな条件を設けないで購入します(その方が、退去時の精神的ショックが小さくてすみます)

     投資目的だから、社宅よりは少しマシという程度の広さとします。但し、立地条件だけはこだわることが重要です。貸しやすさを優先条件とします

     投資目的だから、転勤になったときは賃貸することにし、賃貸料で住宅ローンが賄えるような資金計画とします(普通、この計算は頭金が2割くらい入れないと成り立たないものです)

 

――条件をまとめると、「高く貸せる立地」 そして 「広過ぎない間取り・面積」です。

 投資目的とは、適当な時期に売却して老後の住まいづくりの資金にするという意味でもあります。

 住宅ローンを完済したときに売却したと仮定すれば、売却代金がまるまる残るわけですが、その場合、よく考えてみると、投資した金額は、購入した時の頭金だけです。

 (厳密に言えば、購入時の諸費用と固定資産税などの支出もありますが、ローン返済が家賃でそっくり賄えるとしたら、ないに等しい額と言ってよいでしょう)

 ということは、売却代金が購入時の半額になってしまっても頭金が2割だったとすれば、2が5に増える計算となります。3割分が儲けです。

 しかし、ローンの完済前に売る必要が出てくる確率が高いはずです。そのとき、ローン残高以上の金額で売れないと預金から手出しでローンの清算をする破目になります。

そのような事態にならないためにも、また、そうはならなかったとしても、売るなら少しでも高く売りたいと考えるのが普通です。

こうした点を考慮したとき、立地が最も重要な選択条件になります。都心に便利、最寄り駅に徒歩5分、大型商業施設などが近くに揃っている、といった条件が必須です。

 それ以外には、維持管理が長期間、適切に行われることが期待できるものを選ぶことです。

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