第10回 我が家が値上りして嬉しくないこと

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25年以上も前(1988年以前)にマンションを買った人の多くは、大きな値上がりを体験しました。タイミングや購入した物件・場所によって差はあるものの、短期間に我が家が2倍、3倍になったことで驚いたものです。

しかし、現に住んでいる家の値段が何倍になろうと、何の得もありませんでした。むしろ、固定資産税がアップしたことで苦々しく思った人もあったはずです。

一方、売却した人は、高値に驚くとともに手にした金額に喜び一杯だったことでしょう。ただし、その資金でもっと良い住まいを手に入れようとすると、郊外のまだ値上がりの波が及んでいない街へ行くほかにありませんでした。売却した場所の近くは同じように値上がりしていたため、売却して得た金銭に(新たなローンなどで)相当プラスしなければランクアップした家は買えなかったからです。

●値上がりすれば、もっと条件の良い家に買い替えられるという思い込み

マンションが値上りすれば、それを売って資金を作ることができる。そうなれば、郊外の庭付き住宅を手に入れられる。昔、マンションは夢の庭付き一戸建てを手に入れるためのステップ、つまり仮住まいという認識でした。

 

地価が上がり続けて、都内でマイホームを取得することが年々厳しくなる過程で、初めマンションは土地がないから価値がないとか、空中を買うようなものだとかの批判もあって資産価値に疑問符が付いていたのですが、そのうち、とりあえずマンションを買い、いずれ売却して頭金を増やすことができれば、一戸建てへ買い替えることができるかもしれない。

多くの庶民がそう思ったのです。

そうして40㎡の2DKや50㎡の3DKの、今では考えにくい狭いマンションに若いファミリー世帯の買いが集まったのです。

 

買ったマンションが値上がりするという期待はどこから生まれたのでしょうか?まずは、新築マンションの価格上昇でした。しばらくすると、中古マンションも高く売れることが知れ渡ったのです。

 

そうして、ますますマンションは仮住まい意識の中で、まるで利殖目的のように選択されて行ったのです。昭和40年代から50年代にかけてのことでした。

 

事実、マンションを売って一戸建て住宅を手に入れた人は何十万人とあったのですが、買った一戸建ては遠隔地でした。デベロッパーも、そのニーズに応えようと山林を買収して大型団地を多数開発し、「○○ニュータウン」と名付けました。

最寄り駅からバスを利用するか、家族に送り迎えをしてもらうことが必須の立地ばかりでしたが、それでも「庭付き一戸建て」は憧れであり夢だったのでしょう。売れ続けました。

 

家族のためには遠距離通勤をものともせず、一戸建てを求めるのがサラリーマンのお定まりであったとも言えます。

 

●その昔、買い替えができたのは自宅が高値で売れたからではない

「都心のマンションを売って郊外の一戸建てへ」という買い替えコースは、価格でいうと、「マンションを1000万円で購入、何年か後には一戸建てを2000万円で」というふうに、2倍くらいの差がありました。

 

では、マンションは2倍に値上がりしたのでしょうか? そうではありません。マンションを購入したとき住宅ローンを組みましたが、当時の金利は現在の10倍以上でした。つまり、年利7%、8%が普通でした。

 

持家促進策を採っていた国は住宅金融公庫を通じて低利融資を始めましたが、それでも5.5%だったのです。

 

金利が高いローンの場合、返済当初は金利ばかり払うイメージでした。返しても返しても、元本は中々減りません。

 

ちなみに、公庫から1000万円を5.5%、35年償還で借りた人が10年経ったとき、残高を見ると約880万円もありました。つまり10年も返済し続けたのに、まだ12%しか減っていなかったというわけです。民間銀行のローンを利用した場合は、推して知るべしです。

つまり、頭金を大きく増やすというマイホーム投資に成功した人はいなかったのです。

 

では、なぜ一戸建てが買えてしまったのでしょうか?答えはこうです。

 

日本が高度の経済成長を続けていたので、サラリーマンの所得が増えたことによって貯蓄も増えて行ったこと、加えて所得の増加は住宅ローンの増額借入が可能になったことによります。

経済成長は賃金のベースアップだけでなく、役職手当等のプラスが大きく寄与したのです。バブル経済が終わり、日本経済がデフレ状態に転換するまで、サラリーマンは出世しなくても年1回は昇給し、ボーナスも結構な額をもらえていました。

また、企業の成長とともに役職者も増えたので、その流れに乗って行くことで個人年収はうなぎ登りでした。そんな時代が長く続いたのです。

 

●自宅マンションは値上がりしない方がいい?

 

今後はどうでしょうか? 言うまでもなく、賃金上昇は昔ほど期待できないですし、短時間で多額に頭金を貯め込める時代ではなくなりました。よって、買い替えを成功させるには、様々な知恵と工夫が必要になったと言えるでしょう。

買い替え先も定番の一戸建てではなく、マンションからマンションのコースが圧倒的に多いはずです。

としたら、冒頭でも述べたように、高値で売却できても糠喜びに過ぎません。自宅の近所は他のマンションも同じように値上がりしているので、ランクアップした家は買えないのです。

ボーナスには一切手を付けずに貯蓄し、かつ仕事に精励して出世を狙い、役職手当をせしめるとか、脱サラして大きく所得を増やす、あるいは親の援助や相続を当てにする、または転勤先の社宅で住居費を抑える一方、ちゃっかりと東京でキャピタルゲイン狙いのマンションに投資しておくといった知恵を要するというわけです。

さもなければ、値上がりが十分に期待できそうな都心のマンションを買って住み、その次か、そのまた次には、割り切って郊外の駅前マンションを買う。都心を離れられない人はダウンサイジングする(3LDKから2LDKへ。30階から5階へ等々)といった選択肢も視野に入れておくべきなのかもしれません。

 

どのライフプランを選択するにせよ、資産が多くて困ることはないはずです。多いほど選択肢も増えることでしょう。

 

やはり、買ったマンションの資産価値は上がった方がいいのです。逆に言えば、価値がどんどん落ちてしまうようなマンションは避けなければなりません。

 

・・・・・・・今日はここまでです。関連記事は、別のブログ「マンション購入を考える」の500本余の中から多数見つけることができるはずです。是非ご訪問ください。

 

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