第9回「モデルルームの魔法を解く」

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このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介しています・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

 

マンション販売は、工事中に販売を始める「青田売り」が一般的です。

その場合、購入者は、実物を見ないで決めることになりますが、そのことが完成後の「こんなはずではなかった」という失望を生む原因になることがあります。

注意すべき点は、どこにあるのでしょう。気持ちよく入居の日を迎えるためのポイントをお話ししましょう。

 

●実物とモデルルームのギャップに失望しない人はいない?

事業者としては、早く販売のメドを立ててしまいたいので、青田売りに踏み切ります。

完成してから売るのは、モデルルームの建設予算が捻出しにくい小型マンションの場合と工期の短い低層マンションくらいです。

マンションは工事途上、モデルルームだけで契約してもらうというのが業界の慣習になりました。大きなトラブルも生まなかったことから、業界全体が「青田売り」を常態化させて来たのです。

 

しかし、モデルルームと購入した部屋があまりにも違うという印象が購入者をしばしば失望させます。購入する部屋とモデルルームが同じタイプであれば問題ないのですが、そうでないことが多いので、想像と違ったという失望感は、どうしても生まれがちのようです。

例えば、部屋の真ん中に垂れ下がった梁。その圧迫感は、尋常ではありません。「こんな部屋と思わなかった」と、ショックを隠せない購入者もいます。また、「個室がこんなに狭いとは思わなかった。本当に〇畳ありますか」などの感想も漏れます。

モデルルームというのは、最近では原型(標準仕様)が分かりにくい造りとなっているケースも多いようです。間仕切りを変更し、仕上げ材をグレードの高いものに変え、設備もオプションを加えて豪華に見せています。更には、家具やインテリアによる演出もあり、感動的な姿で登場します。

 

商品のデコレーションは商売の常道です。とはいえ、モデルルームには見学者を錯覚させる魔法のような力が備わっているようです。

 

化粧を取ったらまるで別人だったというくらいに、厚化粧した役者のようなもの、または、昔の見合い写真のようなもの。それがモデルルームだと思った方がいいかもしれません。

 

モデルルームには、「このシールが貼ったものはオプション品です」、「家具は販売価格には含まれません」などと、注意を促すプレートがどこかに掲示されています。

しかし、買い手は素人。不慣れです。言葉だけで本当(標準仕様)はこちらと言われても、グレードアップした方だけを見るので、それが記憶されてしまいます。

厚化粧をしていない素(す)の部屋を見た瞬間、きっと詐欺だと怒りたくなるはずです。しかし、「想像していたものと違う」などとクレームをつけても、売り手は涼しい顔です。

天井から垂れ下がった大梁の問題にしても、図面の上にきちんと表示してあるからです。重要事項説明書にも、「図面をよく確認してからお申込み下さい」と記載してあります。よく確認しなかった買い手が悪いということになってしまうのです。

 

モデルルームの残像は強烈に残るもので、ある程度は仕方がないのですが、そこに、売り手側の意図があることは間違いありません。

 

買い手は図面を見慣れた専門家ではないのです。見落とすこともあるはずです。しかし、「ここは大梁が通っていますから、梁下から床までの高さは1900ミリしかありません。梁が内側に30センチほど出ておりますから、こちらの部屋とは同じ6帖でも、だいぶ狭く感じられることでしょう。これらの点を予めご承知おきください」 などど、説明する営業マンはいません

質問すれば答えてはくれるものの、聞かれない限り、都合の悪いことは黙っていよう。後でクレームをつけられても逃げる手はきちんと打ってあるから心配ない――これが、普通の売り手・営業マンの偽らざる姿勢です。

 

◆錯覚に陥れるモデルルームの演出

マンションに限らず、商品というものは、その価値をより高く見せるための展示方法に工夫を凝らすものです。言うまでもないことですね。だから、マンションの展示に演出を施すこと自体に文句をいうことはできません。ただ、程度問題ということは言えるかもしれません。

 

どのような商品でも、その商品が最も輝いて見える展示方法を選択します。

あるものはショーケースに納め、明るいライトで照射します。また、あるものは商品の機能を理解し魅力を感じてもらうためのデモンストレーションをしたりもします。

 

マンションのモデルルームも買い手の購買意欲を掻き立てるような演出(展示方法)を施すのが一般的です。しかし、そこには少々度を越した方法が採用されています。

 

●モデルルーム演出には驚きの事実が隠されている

では、モデルルーム演出の技巧に迫ってみましょう。以下は、未完成マンションにおける別棟のモデルルーム (マンションギャラリーやパビリオンと称される販売センターの中に用意される) での展示方法を分析したものです。

 

1.存在しない間取りを展示している

特定タイプの一部を設計変更してある。 原型をとどめていないような変更がなされた間取りになったモデルルームも少なくありません。例えば4LDKを2LDKに改造。これにより、狭い部屋があっても、それを見せない。その一方、広いリビングを感動的な広さにして見せることが可能となるのです。

モデルルームの入り口には、図面による断り書きが掲示されています。標準プランはこうだが、モデルルームはこの部分がこう変わっていますと。

すべて違法でも誇大広告でもありませんが、カーテンや家具で演出されると、実際以上に素晴らしい部屋に見えて来るもので、ともすると買い手が大きな勘違いに陥る危険な展示方法が採られているのです。

2.オプション品を多数装備し、定価表にない高価格商品に変更している

例えば、装備されていない「食器洗浄乾燥機」や「エアコン」、標準ではフローリング材の床の廊下をタイル貼りにする、壁の一部を標準では白い無地系のビニールクロスであるところを別の洒落た素材とのコンビネーションにするといったことです。

もちろん、それらには「オプション」と書いたシールが端の方にしっかり張り付けられています。

3.家具・インテリアが絶妙に配置され、夢見心地にさせる演出を一段と強化している

分譲価格には含まれていませんと断り書きがなされてはいるが、オプション品使用とともに、見学者を錯覚させる効果は大きいのです。

4.「専有面積の広い少数タイプ」を展示している

分譲戸数の10%しかないような少数タイプを敢えて選んでいるのは、それが窓の多い角住戸であったり、専有面積が特に広かったりし、見映えするからです。

この4点がモデルルーム展示手法の特徴です。マンションが完成してしまえば、モデルルームは建物本体に移行するので、上記の問題は一部消えます。

 

繰り返しますが、モデルルームというものは、着飾った娘さんが写真館に行って撮って来たお見合い写真のようなもの。実際に会ったときとのギャップはかなり大きい。そういった性格のものと認識しておく必要があるのです。

 

●失望しないための策は?

さて、マンション業者の商品展示方法を批判してばかりしていても仕方ありません。錯覚に陥らないための策を自衛手段として講じるしかないのです。では、どうすればいいのでしょう。

図面とモデルルームを睨みながら、自分の部屋はどうなるだろう。ここからオプション品や家具をはぎ取ったらどうなるだろう。これを想像することは、簡単ではありません。

経験を積んで慣れるしか、完成後の失望感をなくす道はないのです。しかし、経験を積むことも容易なことではありません。

そこで、おススメするのが、家具も何も置いていない部屋の見学。当然、別のマンションになりますが、完成済みの販売物件を探して見に行くのです。

もちろん買おうとしている間取りに近いタイプを見るのがベターです。少し面倒ですが、マンション情報サイトを丹念に当たれば見つかるでしょう。相手の業者さんには悪いですが、見せてくれないことはありません。

そして、広さの感覚をつかむのです。柱や梁の出っ張りがいかに部屋を狭く見せるかが分かることでしょう。廊下の寸法、キッチンの広さ、リビングダイニングの広さなども実際に近いものを見て感覚を掴む体験学習ですね。

また、完成マンションを検討している場合、本体内にモデルルームが用意されますが、着飾ったモデルルームは多くても3室程度です。自分が見たいと思う部屋は家具も何もない「素の状態」 で見ることも可能になるはずです。

無論、モデルルームと同一タイプの未販売住戸があれば、素のままで見学し、比較ができることになります。違いがはっきりと分かることでしょう。

仮にモデルルームと同じタイプでなくても「素の部屋」を見る意義は高いでしょう。

 

・・・・・・・・今日はここまでです。関連記事は、別のブログ「マンション購入を考える」の500本余の中から多数見つけることができるはずです。是非ご訪問ください。

 

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