第2回「マンションの買い時を知る」Part Ⅱ

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前回の記事で、「値下がりしても、この3年間の上昇幅(20%台)程度なら、下がっても5%か10%に留まる可能性が高い。歴史がそう教えてくれている」と述べましたが、住宅ローンの金利が大きく上がると予想は外れる可能性があります

リーマンショック(2008年秋)を機に、その前の数年で急騰した価格が下落に転じたものの5%に留まったのは、住宅ローンの金利が低下したことによって購買力が上がったためとも言えるのですが、この先、これと反対のことが起きない保証はないからです。
金利が上がったら購買力は低下します。デベロッパー各社は販売価格を一段と下げざるを得ない事態もあり得ます。つまり5%ではすまないかもしれないということです。

前回、「5%か10%の下げ」と幅を持たせたのは、不確定要因の金利動向を想定したためです。

 

●買い時はいつ?

買い時はいつかというテーマで書き始めた記事ですが、少し脱線気味になったところで前回は終わりました。

ここからは、本題に戻してお話ししたいと思います。

過去3年半(2013年~2016年半期)の価格の上昇は、少し頭打ち傾向を見せ始めています。しかし、直ちに下落へ転じるとは思えません。

地価も建築費も高い水準にあって、急落する見通しはまだ立たないのです。
(この件の事情に関しては、またの機会に書きます)

筆者はまだ値上がり傾向は続くと見ているのですが、高止まり状態になるのは遠くないでしょう。 明確な下げに転じるのは早ければ東京オリンピックの前年、2019年からと考えています

そこから3年くらいが調整局面となるはずですが、下落幅は何度も述べるように現相場から5%か大きくて10%ダウンです。

もっと大きく値下がりすると確信が持てるならば、2022年か2023年辺りまで待てばよいかもしれませんが、下がるとしても下げ幅がその程度なら待つ意味はありません。まして金利が上がったら(たぶん上がらないのですが)、待つ意味は全くないということになります。

そうであれば、多くの人が「高いけども待てない」と購入に踏み切る「今」の決断も悪くないのです

 

●買い時は「買いたいと思う時」だ!!

買いたい時が買い時」という金言をご存知でしょうか?マイホームたるものは、株式投資のように買い時を窺って買うものではない。 結婚や子供の誕生・進学、転勤、賃貸契約の更新、社宅からの転出といった個人のライフサイクルによって購買動機が生まれるはずで、そのタイミングで買いたいと思ったら買えばいい。

大体このような意味でしょう。他界された、ある評論家が雑誌上で語った言葉です。

待っても価格が大きく下がる見通しが立たないとしたら、買い時は「今」でいいのです。

 

●新築相場が下がったときの我が家について

最近、増えたと感じるのは、この2~3年間に購入した人からの「自宅の評価依頼」です。付け加えると、「高く買った気がする。10年以内に売るとしたら、どのくらい損を覚悟するべきか」という趣旨の依頼です。

ここまで述べて来た内容を整理すると、今は高値圏にあること、そう遠くない日に下落が始まること、しかし、さほどの下落幅ではないだろうということ、そのような市場の動向を踏まえると、「買い時は今だ」ということでした。

しかし、「早まったかもしれない」と感じている人が多いのでしょう。それが、依頼増加の原因です。

そこで、以下は「早まったかもしれない」と思っている人に向けての所見です

高い時期に購入した自宅マンションを売却しようとしたとき、折悪しく相場が下落していたら我が家の価格はどうなるのか? 大きな損失を抱えてしまうのか? そもそも売れるのか? ローンの残金(残債)は売却で清算できるのか?

このようなご心配の一助になると思いますので、以下をご高覧ください。

 

●新築相場が下がれば中古も下がる

中古マンションの価格は新築の相場と連動します。新築志向の強い日本では、まず新築を目指しますが、新築価格が上昇すると手が届かない人が増えます。

仕方なく、中古も視野に入れて探します。中古に向かう人が増えれば、中古の取引が活発化し、価格もじわりと上昇します。この連関が中古価格の上昇という傾向を生み出すのです。

この反対のトレンドも当然あります。新築価格の下落過程では、中古価格も低下します。

高い時に買ってしまったとしたら、売却時の下落幅は期待を裏切るレベルとなることでしょう。

 

●住まいは売らない限り損得は現われない

30年前(1986年以前)にマンションを買った人の多くは、大きな値上がりを体験しました。タイミングや購入した物件・場所によって差はあるものの、短期間に我が家の値段が2倍、3倍になったことで驚いたものです。

しかし、現に住んでいる家の値段が何倍になろうと、何の得もありませんでした。むしろ、固定資産税がアップしたことで苦々しく思った人もあったはずです。

一方、売却した人は、高値に驚くとともに、手にした金額に喜び一杯だったことでしょう。ただし、その資金でもっと良い住まいを手に入れようとすると、郊外のまだ値上がりの波が及んでいない街へ行くほかにありませんでした。
売却した場所の近くは同じように値上がりしていたため、売却して得た金銭に(新たなローンなどで)プラスしなければランクアップした家は買えなかったからです。

反対に、バブル期に高額な住まいを購入した人は、その後の極端な値下がりを体験することとなりました。
何かの事情で売りたいとなったとき、現実の厳しさにぶつかりました。売却して得る金銭では住宅ローンの残債を清算できないことを知ったからです。いわゆる追い銭が必須でした。
その金額の大きいこと。結局、売却を断念した人も多かったはずです。これは含み損を抱えてしまったものの、損失が確定しないで済んだというケースです。
つまり、値下がりしても、売却しなければ損は表面化しないことを意味します。

ものは考えようと言いますが、同じマンションの同じ間取り、同じ階であったとしても、購入する方が賃借するより充実感は大きいはずです。
賃貸では得られない周囲の賞賛などから来る満足感、快適な暮らし、幸福感、老後の安心感などを手に入れることができるからです。それがマイホーム購入の最大のメリットでもあるのです。

こうしたものを筆者は「精神的利益」と言っているのですが、これは経済的利益(得失)とは比べようがない、測り知れない大きな価値と考えます。最後はこう割り切るしかないのです。というより、本来ここにこそマンション購入の目的を見出すべきとも言えましょう。

 

●金利が低いときはローンの減り方が早い

最後に、値下がりの許容範囲を知っておくことをお勧めしたいと思います

値下がりした自宅を売りたくても売れない状況とは、追い銭が大き過ぎて銀行清算ができないことを意味します。 その限界点、つまり許容範囲を知っておくことも大事です。

試算は簡単です。銀行やSUUMOなどのサイトで住宅ローンシミュレーションの計算ページ探し、金額・金利・期間などを入力すれば10秒もかからず答えが出て来ます。

その一覧表(月ごとに金利と元本と残高が明記)の任意の時点を見ればいいのです。

例えば10年後(120回目)の行を見て残債が3000万円だったとしたら、3000万円以上で売れれば追い銭は要らないことになります。5000万円で購入した我が家が最悪で3000万円に下がっても大丈夫というわけです。 値下がり率は40%です。

筆者もよく住宅シミュレーションを利用します。ご相談者へお答えするために必要な場合があるからです。

そのシミュレーターを使うとき、入力するたびに小さくなって来た金利の数値に驚かされます。最近は、ご存知のようにコンマ何%という低金利です。

昔は毎月の返済の大部分が金利の支払いでしたから、返しても返しても元本はなかなか減らないものでしたが、超低金利の現状では返すたび元本がぐんぐん減って行きます。

ちなみに、1000万円を30年返済で借りた場合、固定期間選択型10年を選んだ場合、金利は0.8%程度なので、その設定で10年後の残債をシミュレートしてみました。

出た答えは約693万円でした。元本は307万円減る勘定です。期間3分の1が経過した時点で30%ほど元本は減るというわけです。

住宅ローンが30%減れば、その分が値下がりの許容範囲ということになります。

・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。

※関連記事は、別のブログ「マンション購入を考える」の500本余の中から多数見つけることができるはずです。是非ご訪問ください。

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