第195回 新築マンション市場の暗雲晴れず

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このブログは5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

業界OBの筆者には、つい売り手側の立場で業界を見るクセが残っています。新築マンションの売れ行きをチェックするときも、マンション業界は大丈夫かと心配してしまうのです。

 

先日の新聞報道もそうでした。新聞報道とは、不動産経済研究所の調査発表データです。18年12月の契約率が49.4%と見慣れない低い数字だったからです。

 

●売れない新築マンションの実態が見える

月間契約率(初月契約率ともいう)は、発売したマンションが当月末日までに何%売れたかを示すもので、2016年1月に50%台という久々の低い数字が出て以来、3年間の毎月をウォッチングしてきましたが、好調・不調の分かれ目とされる70%を割り込む月が頻繁に現れていました。それでも、50%台になることは18年11月まで一度もなかったのです。

年間平均でも、2年連続70%を割る(2016年:68.8%、2017年:68.1%)事態となっていたのですが、60%台も後半でした。ところが、2018年はとうとう62.1%と危険水域に落ちてしまったのです。

 

売れ行きが悪化すれば、完売までの時間が長くなるのは明らかです。新聞にも、2006年頃は完売までの時間は半年だったが最近は1年半もかかっているという記述がありました。2006年頃と言えば、前回の価格急騰期です。早くしないと買えなくなるという購買者心理が売れ行きに拍車をかけた時期でした。マンション業者が最も潤った時期だったかもしれません。

ところが、2008年秋に起きたリーマンションショックを契機に世界金融危機、世界同時不況が叫ばれ、これが日本にも波及、バブル後の「不良債権の山の再来」を恐れた金融機関は早々に手を打ちました。その影響で、中小・中堅のマンション・不動産会社が多数、破綻やマンション事業からの撤退に追い込まれまれたのです。

今も活躍している中小企業、中堅デベロッパーもありますが、その数は少なく、最近のマンション業界は大手か異業種大手ばかりになったと言って過言ではありません。異業種大手とは、丸紅や伊藤忠、住商などの商社、大和ハウスや積水ハウスなどのハウスメーカー、近鉄不動産や名鉄不動産などの電鉄系のことです。

 

こうした大手は再び事業継続が困難になっても、倒産・破綻危機に至ることはないはずですが、だからといって経営が苦しくないとは言えないはずです。

どんな企業にも、また一部門であっても「年間の目標売上と目標利益」があります。本当に大丈夫なのでしょうか?

 

大手は、マンション分譲以外の事業、例えばオフィス賃貸が大きく育ち、その収益は安定していますし、好調な高額マンション販売で決算の数字が良好であることは開示される経営数字からも明らかです。

 

しかし、マンション業界全体を俯瞰すると、年間の供給戸数は低迷が続き、冬の時代を迎えていると言えます。

供給が少ないのは、売れ行きが悪いため売り出しを止めている側面もあるのです。本当の契約戸数は分からなくても、売出し(供給)戸数を見れば見当がつくのですが、2018年は前年比で3.4%増えたものの、冒頭で見たように売れ行きが良くないので在庫が増える結果を招いています。

2018年の新規供給戸数は37,132戸でした。3年間の推移は2016年:35,772戸、2017年:35,898戸と低位安定といったところです。不動産経済研究所の予測では2019年も2018年並みとなっています。

 

●価格はようやく横ばい?

価格、ようやく上昇にブレーキがかかって横ばいになったと見て良さそうです。

値上がり前の2012年から2018年までの首都圏全体の価格(坪単価)の推移を見てみましょう。右は23区の数字です。

2012年:@213万円(23区:@264万円)

2013年:@230万円・・前年比8.0%/23区:@285万円・・前年比7.9%

★2014年:@235万円・・前年比2.2/23区:@288万円・・前年比1.0

2015年:@257万円・・前年比9.4%/23区:@326万円・・前年比13.2%

★2016年:@262万円・・前年比1.9/23区:@332万円・・前年比1.8

2017年:@284万円・・前年比8.4%/23区:@357万円・・前年比7.5%

★2018年:@287万円・・前年比1.2/23区:@375万円・・前年比5.0

 

この数字を見て気づくのは頭打ち(★印)になったかと思わせた翌年に再び急騰していることです。まるで2年ごとに急騰する法則性があるかのような動きを見せています。まさか2019年は再び急騰するなどということはないでしょうか?

新築マンションの原価率の高さ(利益幅に余裕がない)から見て、売れ行きを見ながら価格を下げるのは困難であり、まして業界各社が談合して上げ下げをしているとは考えられないので、今年はようやく横ばいになると考えていいでしょう。

 

1年前、筆者は2018年は頭打ちになり、2019年にはピークアウトすると予想していましたが、どうやらその通りになりそうに思います。

 

ただ、23区だけはまだ上がるような予感もします。格安マンション(ただしバス便)も23区内で売り出されますが、一方で高額な再開発案件も何か所か予定されているので、〆てみるまでどちらに転ぶかは分かりませんが、物件によって売り手の強気が通用してしまう面もあるのです。

 

価格上昇に歯止めがかかったとすれば、購入計画を持つ人にとっては有り難いことです。しかし、売れ行きが急回復することにはつながらないでしょう。しばらくの間、底這い状態は続くに違いありません。

 

●背に腹は代えられない

マンション業者の一部は、「売れないものは仕方ない。値引き・値下げはせず、じっくりと売って行こう」と考えていると聞きます。本当にそうでしょうか?それができるのは、多角経営が上手くいっている企業、もしくはマンション分譲の売り上げに頼らない企業だけではないでしょうか?

仮にそうであっても、部門別の目標は簡単に変えられるものではありません。ところが、「2010年以降に方針を転換しているから、今の低迷も想定通りで、さほど問題はないのだ」とも聞きます。果たして、どちらが正しいのか?

筆者の販売現場から聞こえて来る声だけで語るなら、多少のサービス、多少の値引きをしてでも早く売りたいのです。何年かかろうとも値引きしないで売り切るつもりのマンションデベロッパーは2社だけです。

 

基本的にマンション販売は竣工時の完売を目指すものです。遅れても竣工から半年以内に完売したいのがデベロッパー(売主)のホンネです。3月は決算期です。売り上げ計上基準は「引き渡し」なので、建物が竣工していれば3月末日までに買い手に引き渡しをしてしまいたいはずです。

 

年度末にあわてても遅いので何か月か前に目標値を修正したりしますが、追い込み時期には多少の不足もあって販売促進策が打ち出されます。そのような売主の物件を検討するようになったら、値引き交渉もたやすいかもしれません。引き渡しまでには、まだ若干の時間が残されています。買い手にとって今がチャンスです。思い切ってチャレンジしてみましょう。

 

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