第189回 新築未発売物件に惹かれる顧客心理

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このブログは5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

 

売主の立場では、欠点・弱点をぼやかし、長所・美点のみをアピールする方が買い手の関心を呼び、顧客リストを数多く集められるはずだ。そう信じるマンション業者は、長所・美点だらけの広告案を作成します。

 

広告会社を呼び、美辞麗句だらけ、美しい外観、豪華なエントランスホール、大型マンションでは高級ホテルのツインルームまがいのゲストルームやお洒落なカフェまがいのラウンジなどの完成予想図、そして広く立派なタイプの間取り図などで紙面を飾ります。

 

嘘や誇大な表現は許されなくても、いいとこ取りして広告表現をすることは可能です。買い手にとって、最も関心の高いのが価格ですが、そこを発売直前までひた隠しにして広告を続けるのも常套手段です。

 

●新築マンションの情報開示は遅い

買い手は場所に不都合がなければ詳細を早く知りたいと考えるものですが、なかなか分かりません。設備・仕様も、間取りも小出しです。ホームページを開いても、設備・仕様は「Coming Soon」が長く続きます。

 

買い手の期待感を煽り、できるだけ数多くのレスポンスを得ようとするのです。買い手は、隠されれば隠されるほど詳細を知りたい、早く価格を聞きたいという心理になり、モデルルームの見学に誘い込まれます。

 

実は、まだHPに載せる準備ができていない場合もあります。載せたくても載せられないのだと彼らは言い訳します。ウソではありませんが、あえて隠していることもあるのです。知りたい人はモデルルームにいらっしゃいと言わんばかりです。

 

来てくれたらしめたものだ、営業マンたちは手ぐすねを引いて待っています。

 

彼らは情報を開示しつつ、欠点や弱点を長所・美点で覆い隠そうと図ります。セールスの教本には、そう書いてあります。

 

どんなマンションにも短所や弱点があり、一定程度は妥協しようと買い手も覚悟しているとはいうものの、物件価値を不当に低く見られてはいけないので、何とか誤解を払拭して購入意欲を高めてもらおう。それが販売員の務めであると信じています。

 

彼らは買い手の疑問に詭弁を弄したり問題点をすり替えて煙に巻いたり、答えなかったりもします。長所を何度も口にし、力説することでマイナスを少なくともゼロに転換しようと図ります。

 

一方、買い手の中にはクールな人もあって、詭弁やすり替え、ずらしに気づきます。それでも、問題点や弱点、欠点を受け入れたうえで購入を前向きに考える人が残ります。そんな人たちの一部が、答えを見出せないためか、筆者にご相談という形でたどりつきます。

 

そんな物件の中には、筆者が心苦しく思う答えになってしまう物も少なくありません。言い換えましょう。「どちらかと言えば買わない方がいい」という答えになってしまう物件もあるのです。

 

言葉使いには気を使っているつもりなのですが、「辛口批評」に思われてしまうようです。中には、惚れた恋人をけなされたように感じる人もあったに違いありません。きっと、腹を立てているのだろうなと想像しつつ、筆者の評は容赦がありません。

 

「なぜ、こんな新築に惚れたのですか?」と聞いたことはありませんが、内心そんな感想をどこかに潜りこませていることもあります。そもそも、誰が見ても最高の立地にあって最高の建物が、低廉な価格で売り出されたのなら、迷うことも悩むこともないので、筆者に相談するなどという行動も取らないはずです。

 

悩ましい物件だからこそ、どうしたものかを誰かに聞いてみようとするのです。そのようなマンションなので、手ばなしで「良いマンションを選ばれましたね」と書いたのは、8年以上4000件のレポートの中で10件もないのです。

 

ともあれ、どうしてこんな物件を選びかけたのか疑問に思ったとき、答えはなかなか見つかりません。やがて、「新築マンションにしては安いと思ったのだろう」に落ち着きます。新築マンションの方が気持ちいいですから。日本人は新築志向が非常に強いことも分かっています。

 

しかし、立地条件の良い新築は高い。ブランドマンションで付加価値の豊富な、かつグレードも標準以上という物件は予算的に無理。そこで、立地条件を妥協して選択する・・・このような軌跡をたどって新築に着地するのです。

 

立地条件で問題がある物件は、地価(用地費)が安く、大規模であれば建築費も少しは安くできるので、「大手ブランド・スケールメリット、設備も良い」マンションを生み出します。

 

ある主婦は言いました。「ずっと古い家ばかり転々としてきました。今回、初めて新築に住むのです」と嬉しそうでした。転勤のたびに狭くて古い、綺麗とは言えない住まいに住むしかなかったようです。

 

広いお風呂、ピカピカのガスコンロやオーブンと初めて使う食器洗浄乾燥機とディスポーザー、おしゃれな洗面化粧台、未使用の、しかも最新式のタンクレストイレなど、モデルルームに見惚れて住みたいと思ったのでしょう。「新築は設備が良い」そう思って一目ぼれしたのです。

 

「大きな土地で安い」のは、殆ど工場跡地です。駅に近いとしても、その駅の周りには何もなく、生活環境はひいき目に見ても良くないのです。バスを利用して隣町の大型スーパーに出かけないとならないうえに、周囲の飲食店は数えるほどしかないのです。唯一の利点は、駅から5分以内にあることだったりします。

 

マンションの価値は立地で決まる」のです。そのことを忘れてモデルルームの演出に目がくらむ人たちが多数あるという現実に残念な思いを抱きます。

 

2018年を振り返ると、東京23区にも「寂しい駅」が最寄りの新築マンションの評価依頼が多数届きました。ずばり見送った方がいいと述べたものもいくつかありました。

それを購入したという人に失望したこともありました。「その予算なら、もっと立地条件の良い中古が買えるのに」か「その条件なら新築でもネゴすれば手が届く物件もあるのに」と心の中で叫んだことも何回かありました。

 

●新築マンションは価値に見合わない高値の物件ばかり!!

新築マンションの価格高騰は、建築費の上昇と地価の上昇が原因です。売主が利益至上主義に走っているわけではありません。

 

何度もお伝えしてきたように、過去5年で新築マンションの価格は30%余も上がりました。それでも購入可能な人が十分にあれば、市場はバランスします。価格は、市場に支持されてこそ適正と見なされます。言い換えれば、市場価値がマンションの適正価格なのです

 

30%も上がりましたが、それでも売れ行きが大きく悪化しない限り、適正な可価格と言えないこともないのですが、現実は契約率が低下しているので、ぎりぎりのラインに来ていると見るべきです。

 

市場全体が適正な価格水準にあると言えても、個々のマンションを見ていると価値に見合わない価格で販売中という物件も少なくありません。市場価値を測る物差しがないので、割高なものをそれと知らずに買ってしまう人もあります。一方で、買い手とは存外賢いもので、高いと気づいて思い留まる人も多いのです。

 

結果的に売れずに完売まで何年もかかってしまう物件が生まれます。そうなる手前で価格を引き下げて完売時期を前倒しすることに成功する例も当然あります。結局、値下げ後の価格が適正な価格、価値に見合った価格ということになるのです

 

現状は、価値に見合った価格を少し上回るレベルにあると言えます。今後はどうなるでしょうか?

 

今年売り出されるマンションの土地は、1年以上前に取得したものです。タワーマンションなどになると2年も前に買った土地であることが分かっています。その時分に土地が安かったという事実はないので、販売価格の低下を予期することはありません。

 

二大原価の建築費も同様です。工事契約を締結した時期が1年前として、そのころ安く請け負ってくれたでしょうか?もしくは、これから契約するのだとして安く請け負っているゼネコンは見つかるでしょうか?

 

人手不足は3.11地震以降ずっと続いています。2019年中にオリンピック施設や関連工事がすべて完工して、ゼネコンが暇になる見通しもありません。少なくとも今年中に工事契約するマンションの建築費が安くなるという見通しは持てそうにありません。としたら、建築費の低下によるマンション価格の下げはないと見なければなりません。

 

土地代も建築費も低下しない以上、建物品質をそのままにして価格が下がるマンションが登場することはありません。「建物品質をそのままにして」と書きましたが、コストダウン策は行きつくところまで来てしまったので、品質低下も限度と思うからです

 

●再開発で誕生する駅前マンションも当然高い

新築マンションにあこがれる心理は理解できますが、その新築は用地難から極端な供給量に落ち込んでしまいました。筆者がその数字をお見せすると、「そうだったのか、いくら探しても見つからないはずだ。腑に落ちた」そう感想を漏らします。

 

そこで、「中古を検討しよう」と方針を転換する人もいますが、「次を待とう、待つほかないなあ」と考える人も多数です。

ネットで調べて行くと、いろいろな計画があることを知ります。最近の依頼物件では「文京区の春日駅直結マンション計画」や「武蔵小山駅1分の計画」、少し前に遡ると「月島駅2分の大規模タワーマンション」、「国立競技場前の団地建替えマンション」、「渋谷区役所跡地計画」、「国分寺駅前のツインタワー」、「三鷹駅直結タワー」などが思い出されますが、今後も各地で再開発計画は目白押しです。

そして、これらの新計画に期待を寄せてしまう人が大勢あることも知っています。

 

上記の物件は、いずれも驚愕の高値で販売中、または販売予定になっています。当然、駅直結や駅前マンションとして高い価値を持つものが多いと言えます。しかし、その価値に見合う価格かどうかとなると、中には疑問が残るものもあります。

 

蓋を開けたらびっくりの高値に、「こんなに高いとは思わなかった。これだったら、半年前に検討して購入可能だった物件を決めるべきだった。でも、もう完売したらしく手遅れだ」と地団太を踏んだ人にもお会いしました。

 

「待ったら良い物件が出て来る」と期待する気持ちは理解できますが、切りはありません。特に立地条件の良いマンションほど高値で出て来ると思うべきです。「高いとは予想していたが、まさかこれほどとは」という例も多いのです。価格を予想する書き込みもありますが、当てずっぽうで根拠の弱い数字ばかりです。

 

新築マンションは、立地がよほど悪くない限り、安くても過去の周辺事例を下回ることはないと思った方が良いのです。立地の良い再開発物件などは、地域相場の30%高と予測した方がよさそうです。予算が7000万円の人は9000万円になると見た方がいいのです。

 

こう書いても階数や向き、広さを妥協すれば予算内に収まる住戸が買えるかもしれないと期待してしまう人もあるでしょうが、30%も高いと広さは70㎡が60㎡になって、かつ5階以下になるかもしれないのです。

 

●高くても買いの物件はあるか?

そこまでして買う価値はあるのでしょうか?多少の割り増し代金を払っても買う価値があるマンションも確かにあります。

 

あと先考えず、つまりリセールバリューは期待しないとして、「これを欲しい・ここに住みたい」と願う人もあるでしょうし、そのことを否定する気は毛頭ありませんが、遠くない将来に売却の可能性を排除しないなら、高過ぎる買い物は間違いなく損です。

 

価値あるマンションはリセールバリューも高いものですが、購入価格との対比ではプラスになるとは限らないのです。

 

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なかなか良いマンションがみつからないので、つい販売予定物件に期待してしまう買い手の心理は理解できますが、期待は裏切られると思った方がよいのです。少なくとも価格は予算を20%以上は高く出て来ると思って間違いないと思います。

 

新規売出しの物件を待つことを否定はしませんが、足元にある販売中物件を真剣に検討した方が良い場合が多いのです。特に売れ残りマンションを値引き交渉して安く買うという作戦が現実的かもしれません。さもなければ、「優良中古マンション」に狙いをつける手です。

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

 

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