第176回 思いがけない転居事情と自宅の処分策

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このブログは5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

マンションは、いつなんどき売却の必要が起きるか分からないから、売却しやすい条件を念頭に置いて物件を選択すべきというのが私の持論です。

 

今日は、売却の必要が起きる事由を考えながら次善の策について述べようと思います。

 

●一般的な転居事由

一般に転居する理由と言えば、「転勤」が最もポピュラーですね。他には、「子育て環境の良い街に転居した」とか、子供が進学した私立への「通学が遠いから近くに転居した」というあたりがよく聞く理由です。初めてマンションを購入する人では、「子供ができて狭くなった」が一番多いような気がします。

 

また、「定年退職して故郷へ帰る」とか、「自然の中の暮らしに憧れて転居した」なども少ない例ですが実際にある話です。

 

レアなケースとしては「子供の独立」、「親の引き取り(親との同居)」などもあります。

 

「子供の独立」とは、一定の制約から解放され、自身の都合だけで住まいを選択できるようになるので、それを機に転居するというものです。

 

他には、転職先がたまたま通勤圏外の会社になったということがあります。知人の紹介で入社した企業の事業所が遠方だったというケースです。

 

これらの転居事由は、ある程度は想定ができますが、全く想定していなかった転居事由もあります。

 

●思いがけない転居事由

離婚、再婚、近隣住民とのトラブル、親の介護、自身の高齢化、環境変化(道路拡張)、環境変化(近隣の建て替え)、建物の老朽化、建物の欠陥(耐震偽装)、住宅ローン返済遅延といった転居事由がこれに当ります。

 

離婚を想定して結婚する人はいないはずですが、結果的に新たな住まいが必要になる人もあるのはご承知のとおりです。

 

近隣住民とのトラブルから居づらくなって転居した人も現実にあります。親の介護で実家に戻った人もいます。

自身の高齢化が転居につながった人もいます。坂道がつらくなったから、郊外は駅前でも寂しいから、駅から遠いから駅近のマンションに住みたかった等の理由です。

 

環境変化は、交通量が増えて騒音が激しくなったとか、近隣の建て替えで日当たりが悪くなって住みにくくなったというものです。想定できることもありますが、予想外のことが長い間には起きるものです。

 

「建物の老朽化」は、大規模改修に関する管理組合の協議が整わず延期になって、それ以降たびたび不具合が発生してストレスが溜まり、解決のめども立たなかったので転居することになったというケースです。

 

管理組合が管理に熱心でなく、このままここに住み続けると資産価値がひどく下落しそうだから、高く売れそうな今のうちに売り抜けようという動機から売却した人もありました。

 

「耐震偽装事件」が世間を騒がせたのは最近のことのようです。巻き込まれた人にとっては、将に晴天の霹靂だったでしょう。今後も、これに類した欠陥マンションに遭遇する人があって転居することがないとは言えません。

 

100年の歴史ある安定企業であった勤務先が、まさかの経営不振。その影響で退職した人が、その後の人生で住宅ローン返済に苦労するということもないとは言えないのです。知人にも、家を失った人がいます。

 

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人生には思いがけないことが起こるものです。そのようなとき、借家住まいの方が身軽だという考え方をする人もあります。しかし、その選択にはデメリットも多いので、お勧めできません。

 

いざというときスムーズに、かつ有利に売却できるマンションを所有しておくことが賢明なのです。

 

●売却か賃貸か?

転居の際、元の家を売却するとは限りません。賃貸する手もあります。

 

圧倒的に多いサラリーマン諸氏に目を向けて言うならば、定年は第2の人生の始まりであり、かつ結構長いので、悠々自適の暮らしを送りたければ今から対策、すなわち資産形成を図ることが大事だと思うのです。

年金が十分にもらえない時代が来るかもしれない、そう不安を漏らす人も多いようです。

配偶者に先立たれ、子供の世話にもなりたくないとするなら、何が何でも早い段階から資産形成を図る必要があるはずです。資産形成は一朝一夕にはできないのですから、スタートは早い方がいいとも言えます。

どのように図るべきでしょうか?爪に火を点すような生活をしながら貯金を殖やすのもひとつですが、それができない人も多いと思います。

 

しかし、株式もFXもギャンブル。怖い一面があります。投資するにもタネ銭がなければできません。本業そっちのけで投資行動にのめりこむわけにも行かないでしょう。片手間で儲けられるほど甘い投資話が世の中に転がっているとも思えません。

そんな中、比較的少ない資金で、かつ安全に資産形成ができるのが「ワンルーム投資」だと言われ、それに乗ってしまう人も多いと聞きます。巷間、ワンルームマンション投資のセミナー開催が頻繁に行われ、参加するサラリーマン諸氏が多いようです。マンション投資を勧める過激なタイトルの書籍も数多く出版されています。

 

しかし、ワンルーム投資にも欠陥があり、思惑通りにはならないのです。筆者は、自分の経験も踏まえて「ワンルームマンション投資は危険が一杯」という書籍を刊行し、警鐘を鳴らしたこともありました。

 

不動産投資が他の投資や利殖手段と決定的に違うのは、「住宅ローン」が使えることです。最近は頭金も登記料などの諸費用も、まるごと銀行が貸してくれる金融環境にあるわけですから、これを利用しない手はないのです。

しかし、繰り返しますが、「ワンルーム投資は危険」です。その理由は本稿の趣旨から外れるので割愛しますが、筆者の勧める不動産投資は、価値あるマイホームを持つことです。「そこに住みながら儲ける」ことです。

 

最近、既にマイホームをお持ちで住み替えを考えている人にお会いする機会が増えました。特筆できるのは、現在住んでいるマンションを売らずに住み替え先マンションを検討する人たちが多いことです。

 

ご相談は、「新たに買う予定のマンションの資産価値について」と、「今の住まいは売るべきか保有し続けるべきか」というセットです。

ケースバイケースなのですが、売らずに住み替える選択が望ましい人が多いことに驚きを感じます。売って買う行為は「買い替え」、売らずに買う行為は「買い増し」と言いますが、後者のサラリーマン氏が着実に増えています。

以下、「買い増し」のメリットについてお話しします。

 

<資産価値とは換金価値のこと>

不動産を保有すると固定資産税と都市計画税を毎年納め続けなければなりません。そのほか、マンションなら毎月「管理費と修繕積立金」も必要になります。

乱暴に言えば、賃貸マンションの方が家賃だけで済むので安上がりかもしれません。しかし、賃貸マンションにはないメリットが購入にあることを誰もが知っているからでしょう。マイホーム志向の人が賃貸派より圧倒的に多いのは事実です。

 

「住みながら儲ける」、すなわち、自宅マンションを買って、そこに住みながら資産形成を図って行くべきと述べましたが、資産価値とは換金価値です。換金を図ったとき、手にするキャッシュは1000万円よりは5000万円の方が良いのは言うまでもありません。

 

ここまでは、ローンを返し終わったときの話です。終わっていないにしても殆ど終りかけている場合です。大事なのはここからです。

 

ローンが多額にある段階、例えば35年返済で組んだローンが25年も残っているようなときに住み替え事由が発生した場合、資産が資産でなくなることもあります。

つまり、追い銭を払わなければローンの精算ができないこともあるというリスクです。頭金を2割なり3割なり入れて購入した人の場合には、追い銭は要らないかもしれませんが、だとしても、売却後の手残りが殆どないのでは次の行動資金に事欠くことになるかもしれません。

 

とすると、やはり売却によって手許にしっかり大金が残り、次の住み替え先の購入代金(頭金)や、預貯金として残せるようにしなければなりません。

 

転勤がない人でも、何かの事情で住み替えの願望や必要は出て来るものです。一番多い理由は、手狭になったというものです。3LDKにしておけば、住み替えを考える手間もかからないと考える人もありますが、3LDKにも広さはピンとキリがあります。

70㎡に住めば、次は80㎡くらいの広さが欲しくなるものです。子供ができる、できないで多少の違いはあるものの、長く住めば荷物が増えるからです。

 

それ以前に、広さを求めると毎月の負担が重くのしかかる不安が生まれます。その不安を緩和するために安い物件を求めれば、きっと交通便や環境に問題のあるマンションになるかもしれません。

広さを優先して立地条件の悪い物件を選んでしまうと、売却時に失望する確率が高くなります。有利な売却ができるかどうかは、その後のライフプランを大きく左右する問題です。

 

こうして考えて行くと、マンション選びは究極のところ「将来価値の見通し」を立てておくこと、言い換えると、「リセールバリュー」を考えて購入すべきであるという所に行きつくのです。

 

<売らずに買う「買い増し作戦」のススメ>

資産を増やす・資産形成を図るという点に目を向けると、自宅以外の不動産を持つことが有効ですが、先述の通り、ワンルームマンションは適当な対象ではありません。持つなら、ファミリーマンションに限ります。

 

方法ですが、自分が住むための物件を先ず探します。見つかったら、それまで住んでいたマンションは賃貸するのです。これで資産が二つに増えます。

 

気になるのは住宅ローンですが、スルガ銀行の不正融資事件以来、投資目的の購入には銀行の姿勢も厳しいと聞きます。しかし、居住用なら問題ないはずです。ダブルローンになりますから、属性(勤務先や年収等)によっては難しい場合があるものの、空前の金融緩和が続いているので、自宅を売却しなくても融資が受けられるケースが多いのです。

 

最近の相場急騰が自宅売却に動く人の背中を押しているようです。筆者も売却計画のある人に何度も遭遇します。自宅が値上がりして喜び、売ればキャッシュが〇〇〇万円も残ると皮算用している人たちです。

売却すれば確定利益を収受できるので、気持ちが分からないでもありません。しかし、売ってしまったら住むところがなくなります。まだまだ現役の人が、次はどこで買うのでしょうか?

 

相場が上がっているときは、買い替え先も大抵は上がっています。このため、相談者が検討する物件は、例外もありますが、ランクアップというより都落ち的な物件になっていることが多いのです。

例外もあるといいましたが、所得が増えて、次の物件をフルローンで買っても問題ない人のことです。このような人は、売却で得たキャッシュを貯金する目論見を持っています。

それも悪くないかもしれませんが、目先の現金より長期的な資産形成の視点が欠けていることに疑問を感じることがあります。

 

借金付きの資産であっても、賃貸すれば、赤の他人(賃借人)が代わりに住宅ローンを返してくれるようなものですから、いつの間にか借金は消えて正味資産が増えています

 

35年ローンで購入したマンションが10年経過した時点で、買い増しして別のマンションに移ったとします。持ち物件は売らず貸したとして、15年後、通算25年後は、ローンの残債が70%も減っていますから、そこで売却しても多額のキャッシュを手にすることができる可能性が高いのです。一足早い退職金を手にするようなものです。

 

物件によっては、築25年で売るのは勿体ないと思うかもしれません。もう10年待って売るとしたら、ローンは完済、手にするキャッシュは築25年のときより大きいかもしれません。

売却のタイミングは、そのときの市況で判断すればいいのです。

 

死ぬまで保有し続けるという選択ももちろんあるのですが、管理が悪く、古過ぎて借り手探しも難しい状態に変わり果ててしまうかもしれません。空き家だらけになりそうだという危惧を感じたりすることもあります。

借り手に苦労しない場所・物件であっても、家賃がひどく安くなっているかもしれません。人口が減って借り手がいなくなることはないか?借り手を探すのに苦労し、たびたび空室期間(未収入期間)ができないか、つまり賃料が安定して得られるのかどうかという危惧です。

 

こうした状況を踏まえると、どこかの時点で売却する方が良いかもしれません。物件次第です。

 

この観点ではやや不都合な物件の所有者にもお目にかかることが多いので、個別に対策を講じて行くことにしています。経験から言えることは、よほどの田舎か不便な物件以外は何とかなりそうです。

 

大事なことは、古くなっても資産価値の下がり方が低い物件であるかどうかです。ローン残債が7割減っても、マンション価格が購入価格から7割も8割も下がっていたら、正味資産はゼロになってしまいます。

そのときは、残債ゼロになるまで待つほかないかもしれません。しかし、残債を減らすのは賃料ですから、賃料が安定的に入らないような物件(立地)なら早めに売り抜けた方が良いのです。

 

●売却せずに新たに買うことができる背景

昔は、転居先のマンションを買おうとすると住んでいるマンションを売却する「買い替え」が主流でした。今は違うのです。新たなマンションを買うとき、売らなくても買えることに気が付く人が増えています。

 

低利であること、融資姿勢がゆるいこと(貸したい銀行が多いこと)が背景にあるのですが、購入者自身の所得増によって借入額が大きく伸びていることが一番です。

正確には、購入者世帯の所得と言うべきです。世帯年収が増えているのは、夫婦共働き世帯が増えたからです。特に、正規雇用の妻の所得増が貢献しているのです。

 

戦後最長の「いざなぎ景気」に次ぐ経済成長が続く中で、IT関連企業に留まらず、成長する企業は管理職への登用も早いため、年収は意外に早く増えているようです。

 

資産形成を安全に図る、つまり2件目の不動産を所有する好機にあるのです。

物件次第ですが、自宅を売却せずに新たな家を買う。真剣に考えてみることをお勧めしたいと思います。

 

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

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