第155回 駅から徒歩10分は許容できるか?

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このブログは居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から「マンションの資産価値論を展開しております。

5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

 

マンションを資産性という観点から評価するとき、「立地条件」が最も比重が大きいのは言うまでもないのですが、「立地が良い」を具体的にいうと「駅から近い」や「環境が良い」、「都心に近い」などを挙げられます。

 

このうち、抽象的な表現ではなく数値で示すことができるのは、「駅から近い」というときの絶対距離である「何分」です。

筆者は、「10分では遠い」、できれば「5分以内」、妥協しても「7分くらい」と主張して来ました。

 

しかし、現実のマンション探しをお手伝いして分かるのは、駅から8分とか9分といった微妙な物件が多数見られることです。

では、5分を超えたらダメなのでしょうか?今日はこのことについて語ろうと思います。

 

●徒歩5分を超えると中々売れないという現実

新築マンションの販売現場から、駅から5分を超えると売りにくいという嘆きの言葉が聞こえてきます。東京圏では利便性を求める人が増えているのでしょうか?昔は、10分以内なら抵抗はなかったはずなのに。

 

リクルートのアンケート調査によれば、子育て世帯が許容できる距離は7.4分だそうです。ただし、調査結果をよく見ると学童保育やマンション内に保育園が設置される場合という但し書きがあります。

子育て世帯以外はどう思っているのでしょうか?データは見つかりませんでした。

 

ただ、同じリクルートの契約者調査「2017年」では、価格(91.2%)の次に購入に当たって重視する項目に「最寄り駅からの距離」を挙げた人が86.2%もあり、同調査の2005年の75.5%から、毎年着実に割合が増えています。

 

このトレンドは共働き家庭が増えていることと関連がありそうです。同調査の「共働き家庭」は56.8%で、2005年の39.4%から毎年伸びているのです。

 

マンション価格急騰のとき、デベロッパーは採算の取れる安い土地を求めて郊外へ向かいました。また、駅からの距離もやむを得ず徒歩15分でも開発をしたものでした。利便性の高い土地を買うと当然分譲価格が上がり、販売が難しくなるので安い土地を探したのです。買い手も、仕方ないからと通勤便を妥協して(お父さんが痛勤を我慢して)遠方のマンションを買ったのです。

ところが、昨今は遠すぎると売れないので、郊外の土地、駅から遠い土地は取得をためらいがちになっています。遠方は安くても売れないことを他社の事例を見て「危険」と思うからです。

 

子供ができても仕事は辞めない女性が増え、言い換えれば女性活躍時代が到来して、夫婦とも通勤便は優先条件が、予算を除くトップに上がっているからです。

 

特別な交換条件、例えば保育園併設とか、スーパーマーケットが隣接といったものがない限り10分ではなく、もっと近くを希望する人が増えているというわけです。この傾向は、今後長く続くことでしょう。

 

●駅から遠くても許容できるものは?

では、徒歩5分を超え、保育園もスーパーマーケットもない場合は全部検討対象から外れてしまうのでしょうか?

何事も例外はあるものです。広くて街路樹の綺麗な歩道が整備された道をまっすぐ歩いて到達できる10分のマンションと、幅が狭くて夜道が暗いアプローチの5分とでは、10分の方がマシな場合もあります。

駅から5分と近くても、線路沿いや幹線道路沿いの喧騒の中を歩かなくてはならないマンションでは問題があるでしょう。

 

資産価値は、値打ちありと万人が判断することによって決まるわけですから、単純に距離だけでは決められないのですね。では、駅から10分歩くマンションでも、これなら許容できる条件を挙げてみましょう。

上述の「広くて街路樹の綺麗な歩道が整備された道が続くこと」をもう少し分解すると、「桜並木、イチョウ並木などが目に優しく、季節になると、その美しさにうっとりする、そんな綺麗な道を歩く心地よさ」ですし、「電柱の地下化が進んだ広く美しい歩道をベビーカーとともに歩くイメージが浮かぶ」、あるいは、「大きな公園の中や外周に沿って森林浴をしながら辿り着ける」とか、「邸宅の庭に咲く季節ごとの可憐な花や果樹などを眺められる道を歩く」などということになりましょうか?

 

いずれも駅からマンションまでのアプローチが美しく「綺麗な街だなあ。こんなところに住みたいなあ」などと、仮に初めて訪れた市外の人なら「ちょっとした感動」を味わうとき、10分の距離は問題でなくなるだけでなく、余りある価値となるのです。

商店街通りを抜けると、ほどなく我が家に至る」などというのも遠さが気にならない条件と言えるでしょう。

商店には、イベントやセールなどの変化が毎日のようにあって中々楽しいものです。美味しそうな匂いに足が止まることもあるでしょうし、ウインドウに飾られた品につい見惚れてしまうこともあるでしょう。こうした楽しい空気を送って来ることによって10分の時間が消し飛んでしまうのです。

アーケード付の商店街であったら、傘も要らず、魅力はさらに増します。

 

蛇足ですが、10分の道中に何も魅力がない物件は価値がないのかというご指摘を頂きそうなので、補足しておきましょう。

マンション選びの最優先順位は「立地条件」ですが、その立地条件の弱点を補って余りある価値があれば、許容できるかもしれません。 ただ、立地のハンディを補ってお釣りが来るほどのものとなると多くはないのです。

 

有名な川端康成の小説「雪国」の中の「国境の長いトンネルを抜けると、そこは雪国であった」ではありませんが、10分歩いて到達したマンションの目の前には感動的風景があった場合が該当します。

例えば、「広大な空と海、あるいは河川の景色がバルコニー面に広がっている」とか、「まるで森の中のマンションといって過言ではないほどの自然林や公園に接する」といったものです。

このような物件は、少ないですが時々販売されます。バス便ではいけませんが、徒歩10分以内なら問題ない付加価値になっています。

 

●弱点を補って余りあるかどうかの判断は?

上述のような素晴らしい景観などは、どの程度なら駅から遠い弱点を補って余りあるといえるのでしょうか?これを量る機械はありません。個人差もあります。感激派の人とそうでない人、長く風光明媚な場所で暮らして来た人と工場地帯に近い場所に住む人などでも感じ方は違うものです。

 

大事なことは、他人目線です。自分がよくても将来リセールするとき多くの人が感動するようなものでなければ駅から遠いからダメと言われてしまうのです。

 

徒歩10分以上の距離に慣れている人と駅の近くに住んでいる人でも印象は違います。かつて筆者が買い替えたとき、駅から1分のマンションから駅から10分のマンションを選ぼうとして妻に猛反対を受けたことがありましたが、そのマンションも住んでしまえば、工夫をして暮らすので問題は克服できますし、まあ何とかなってしまうのですが、選択段階では大いに家族ともども悩むといことになるのです。

我が家の場合は、筆者はクルマ通勤だったので、専業主婦の妻がOKすればよかったのですが、やや強引に決めたという記憶があります。

 

この問題は、自分個人だけの判断ではなく、他人の意見も聞いてみることで解決できるでしょう。身内や友人もいいですが、人間関係に気遣いのいらない他人や利害関係のない人がいいかもしれません。

 

●都心はみな5分以内。差別化にはならない場合も

勘違いがあってはいけないと思うので、最後にひとつ付け加えておきます。

それは、競争力という視点です。都心のマンションは例えば日本橋のような所になると、徒歩7分以内に駅が5つもあるので、駅5分は強みにはならないということです。

 

駅に近いのが同じなら差別感は建物全体と住戸の価値になるわけです。少しでも高く売りたいと思うなら、エリアによっては「駅5分は当たり前」なので「負けない」というだけのことと心得なければなりません。

勝つ要素は何かに思いを致すとき、同じ5分でも前が公園や神社、河川や運河といった別の要素になって来るのです。無論、建物の差も効果的という場合もあります。

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

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