第153回 みんなが良いマンションは良いマンションか?

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このブログは居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から「マンションの資産価値論を展開しております。

5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

 

みんなが良いと感じるマンションは良いマンションと感じるものなのでしょうか?そんなことはないと反論する人もありそうですが、心理学の分析によれば、「人気があると聞くと、それなら良い品なのだろう」と思うもので、これは万国共通だそうです。

 

この心理を利用しようとしてかどうかはともかく、新築マンションの現場では、売れ行きを実際より良さそうに見せることに腐心します。広告表現でも、販売事務所(マンションギャラリー)でも、売れ行きの悪さはひた隠しにしますし、順調に進んでいる現場では拍車をかけるべく、好調ぶりを誇大に演出します。

 

無論、法的に許される範囲のことですが、ともすると過大評価につながるので注意しなければなりません。冷徹に評価し、品定めをすることが大事です。

 

今日は、マンション選びを人気度合いで決めるのがいいのかどうか、そんなことを考えてみました。

 

●人気マンションは良いマンション:これは真理

これは、実は大事なことでもあるのです。自分がいくら良いと感じても、一般受けしない物件は売却するときに買い手探しに苦労するからです。人気マンションは一般受けするマンションということですから、良いマンション。そう思って良いのでしょう。

 

自宅のすぐ隣に建つ物件は、その人にとってはとても価値が高いものです。現在の生活パターンを変えなくて良いので、心理的負担が軽いからです。子供の学校も変わらないだろうし、通勤にも問題ないはずです。近所づきあいしている人があれば、その人を含めて地域コミュニティーも変えなくていいですね。

 

しかし、その場所は一般に人気の地域でしょうか。自分の住む場所を悪く思いたくないはずですが、客観的に見てどうなのでしょうか。世間一般の物差しで「人気沿線・人気地域」なのか。あるいは、広い地域から買い手を集めている人気物件なのであろうか。このような自問自答をしてみましょう。

 

不人気地域・不人気物件の場合は、買い手が近所の一部の人に限られてしまいますが、人気地域の場合は、地元以外からも買い手を集めることができるのでリセールの際に苦労は小さいのです。

このように考えると、分譲時の売れ行きの良し悪しは、重要な判断指標と言えます。不動産に関しては、「人は人」という独善は賢明ではありません。。

 

●業者のウソを見破ろう

とすれば、売主の演出や誇大表現の売れ行きではなく、本物の売れ行きをしっかりウォッチングすることが大事です。露骨な言い方をすれば、業者のウソを見破る観察眼や知恵が必要なのです。

 

何度か販売事務所を訪れてみましょう。そのたびに売れている部屋の動きをチェックしておくことがポイントです。時系列で価格表に印を付けるだけですが、それだけでも状況は分かります。抽選になりそうな勢いのある物件なら問題はないのですが、それほどでもない物件の場合には要注意です。

もっとも、その動きすら隠す売主が多いのですが・・・

 

何年か前に、「7割売れているという説明を信じて買ったのに、入居が始まって1か月、灯りがついている部屋は3割もない。これはインチキだ」と憤慨している買い手さんから相談を受けたことがありました。

こんな憂き目を見ないようにしたいものですが、どうすれば良いでしょうか?

 

慌てないことが一番です。売り手は、決断を急がせようとして巧みに戦略・戦術を駆使するのが常套です。その策や誘導、もっと言えば罠にはまらないようにしなければなりません。そこで一言「第1期は見送るのがコツです

 

●分割販売の第1期は見送るに限る

大型マンションでなくても、マンション分譲を何回かに分けて行う「分割販売方式」は業界にすっかり定着しました。

この販売方法は、事業者の戦術として選択されます。その狙いを紹介すると、「100戸全部を売り出して50戸しか売れないときは、販売率(契約率)が50%、すなわち50%の売れ残り物件を抱える恰好となり、印象として芳しくありません。ところが、売り出し戸数を50戸に絞っておけば、50戸全部が売れて契約率は100%になる可能性が高い。そうなれば、好調なイメージが出来上がり、“好評裡に完売”と広告で謳うこともできます。そうした方が、次期の販売にも良い影響を与えるので、トータルではうまく行くと業者は信じているため」です。

 

この戦術を採られると、買い手は50戸の中から、ほかの買い手と競うような雰囲気の中で購入を迫られることになります。確かに、一定期間に訪れる買い手の数が一緒なら、100戸より50戸になった方が、競争率が高くなり、買い手を抽選で決めるという状況もあり得るわけです。

 

冷静に考えれば、まだ在庫が50戸あるのに、その中身(間取りや価格)が見えにくいこともあって、買い手は先に売り出した50戸の中から選ぼうという心理に誘い込まれます。

 

また、仮に次期販売分が見えているケースでも、抽選に落ちて買えなくなる可能性もあると判断し、次期を待たずに購入申し込みを決めてしまう買い手も多いのです。

抽選倍率が10倍を超えるようなケースでは、後半も即日完売が続き、いつまでも申込しないでいると、結局手に入らない可能性もあるのは事実です。

 

しかし、実際はそこまでの人気物件は少ないのです。従って、慌てないで次期を待つ方が得策な場合が多いのです。1戸しかない特殊な住戸、例えばルーフテラス付きの住戸などは別ですが、複数あるタイプならば初期から慌てて申し込む必要はありません。

 

売れ行きが悪くても売れ行きが良いように見せかける(見えてしまう)のが、分割販売という戦術です。

 

本当の売れ行きは大したことがなく、竣工時点で半分しか売れない見込みであるようなケースでは、販売促進のために、実物モデルルームとして使用したから、もしくはモデルルームであったから、ということにして(大義名分として)、値引き販売に踏み切ることがあるからです。「待てば海路の日和あり」ではないですが、慌てなければ、そうした恩恵にあずかれるものです。

 

売れ行きが良いか悪いかは、じっと観察していると分かるもの。売れ行きがあまり良くない場合は、売り出しと売り出しのインターバルが長くなったり、何回目かの売り出しの時に、前の回の残り住戸を同時募集(広告に明示)したりする。その他、営業マンの動き・トークなどからも雰囲気は伝わるはずです。

 

抽選倍率でも見当はつきます。例えば、平均倍率が2.0倍に達しないとき、1.0倍住戸が半数以上あるときなども、確実に売れ残りが出るものです。

 

ところで、「自分としては条件も良く、優良な物件と判断したのだが、売れ行きが悪い物件はやはり良くない物件なの?」このような疑問を感じる向きもあるようですが、必ずしもそういうことではありません。

 

立地条件もまずまずだし、プラン(仕様や間取り、設備など)も水準以上、売主も大手といった物件なのに中々完売しないのは、単純に価格が割高なだけです。戸数が多いために残るということもあります。その場合も、戸数に見合うだけの顧客動員ができない理由が、価格の問題である場合が多いのです。

他には、営業がよほど下手か、広告費を削っているかくらいしか原因はありません。

 

ということは、竣工前後に必ず価格の引き下げがあると見ていいのです。そのとき、大々的に価格を変えるという方法なら、平等を期すために先行契約者にも値引き後の価格との差額を返金するといった恩恵が回って来ますが、このような事例は最近20年くらいお目にかかったことはありません。

モデルルーム住戸の格安販売といった個別の値引きで乗り切ろうという策が通例ですが、その場合は、先行契約は損ということになるのです。

 

気に入った物件があるが、売れ行きがもうひとつという印象があったら、とりあえず第1期の申し込みは見送った方が得策になることが多いのです。このことを是非覚えておきましょう。

 

尚、某大手メーカーは、初期の販売で予想以上の売れ行きだったので、次の販売期には価格を上げたそうです。このような例もあるので待つことが裏目に出ることも皆無ではありません。

このようなケースは特殊な例と言えますが、少なくとも「次回値上げする予定ですので、お気に召したのでしたら今お申込み下さった方が得です」のセールストークには注意しなければなりません。

 

●人気物件ではあるが高値で買う。その将来は?

ところで、人気物件であることが間違いないと感じるマンションで考えさせられるケースがあることもお伝えしておきましょう。

 

駅前マンション、駅直結マンションは価値がある。そう思う人が多いのでしょう。いかに利便性の高さを欲しているか、それがよく分かる現象でもあるのですが、これらの物件は当然人気を博し、短期間に完売に至るという事例は、遡れば関東一円に多数見られます。

 

しかし、その大半は高い価格で分譲されます。それでも売れるのは、駅前・大規模・タワー物件など傑出したマンションだからです。高いが将来性があるから・・・このような考え方に基づいて購入する人も多いのでしょう。

 

問題は価格が高いというときの高さのレベルです。慎重な人は「高過ぎる気がする」、つまり「価値と価格がマッチしていない」と購入んをためらいます。

その物件価値は、周辺の物件に比べて30%高くても割高ではない、いやいや適正価格は相場の高々20%だなどと、掲示板上などではかまびすしく、買い手にとっては悩ましいところではあるのですが、割高と判断して見送る人が多いのも事実です。

 

それでもモデルルームの混雑ぶりなどから人気物件ということを知ると、何が何でも買いたいという心理が芽生えるようで、抽選で買い手を決めるような事態も発生し、ますます販売現場が熱気に包まれます。抽選に外れて落胆する人と、当選して大喜びする人が同席する状態がこれに拍車を掛けます。

 

不思議なもので、高いと感じていても「これだけ多くの人が買いに来ているのだから、間違いはないはずだ」と信じ、迷わず走ってしまう人が大勢いるのです。

 

そのような人たちの輪から少し距離を置いた人が「高くないですか」「買っても大丈夫ですか」と筆者に尋ねて来ます。。物件個々の問題なので、ここで具体的な論評はしませんが、筆者がこれまで見て来た人気物件の中で価格が適正・妥当と判定したケースは数えるほどしかありません。

 

高過ぎたると判定したが、短期間に売れてしまった物件。または大量の見学者が押し寄せた人気物件は良い物件という法則に当てはまれば、価値ある物件であることは確かですが、その本当の答えが分かるのは分譲時から10年後かもしれません。

というのも、10年先の価格で販売されている物件も少なくないからです。つまり、人気物件を買っても値上がりの恩恵を享受できるとは限らないのです。

評判が高かった人気物件の中には、後年「高いものを買ってしまった」と臍(ほぞ)をかむる場合もある。これも一面の真理です。

 

 

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