第140回 先行指標の「住宅着工戸数」が伸びない。品不足が続く新築マンション

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5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

 

 

 

国土交通省が2017年度(3月まで)のマンション着工戸数は、前年度比12%減57,591戸だったと発表しました。併せて、6万戸を割るのは7年ぶりとも。

着工戸数統計は、建築主が着工時に提出する「建築工事届け」を集計したもの。最多の東京が前年度比15%減の3万5888戸。

月別の推移でも、2018年3月は前年同期比16%減で7か月連続の減少。

 

住宅着工戸数統計は、持ち家(注文住宅)、貸家、分譲住宅(一戸建て)、分譲住宅(マンション)、給与住宅(社宅・官舎)の5種類に分けて集計しています。

このうち、販売商品として公表(広告)されるのが分譲住宅(一戸建てとマンション)です。ご承知のように、マンションは着工してしばらく経ってから販売を開始します。つまり、着工統計は先行指標と言えるのです。

 

このブログでも過去に何度も発言して来たことですが、新築マンションの「品不足」状態はこの先も続く見通しであることが上記統計から窺うことができます。もう一度おさらいしておきたいと思います。

併せて、品不足の市場における筆者の役割をお伝えしたいと思います。

 

●新築マンション供給戸数は低迷続く

首都圏の新築マンション年間供給戸数の推移をみると、最近数年は10年前と比べると半減しています。(23区は40%減)

発売戸数を比較してみます。

10年前の4年間は年平均:81805戸でしたが、最近4年間の平均:39,258戸となっています。

【2003年:83,183戸・2004年:85,429戸・2005年:84,148戸・2006年74,463戸】

【2014年:44,913戸、2015年:40,449戸、2016年:35,772戸、2017年:35,898戸】

 

 

どうしてこんなに減ってしまったのでしょうか?理由は二つと考えられます。

ひとつは、中小デベロッパーの減少です。

つまり、作り手がいなくなったのです。

2008年秋に起きた「リーマンショック」は世界金融危機と世界同時不況を招きました。

日本も例外ではなく、百年に一度の恐慌が来るとの危機感が広がり、とりわけ金融機関はバブル崩壊の過程で巨額の不良債権を抱えてしまった経験から、守りの姿勢を強めました。

 

その影響を最も強く受けたのが、負債比率の高い中小マンション業者とゼネコンでした。

マンション供給戸数で一度は大手「大京」を抜いて全国一位になった穴吹工務店を筆頭に個性派のマンション業者が、株式上場企業も含めて銀行から資金を止められ、多数倒産してしまいました。

 

大手は大規模マンションを、中小は大手が手を出さないエリアと中規模以下のマンションをと棲み分けしていた業界でしたが、その構図が崩れ、中小業者の分がごっそりと減ったのです。

 

理由の二番目は、用地の取得ができなくっていることです。

良い土地が見つからないと嘆きながらも用地を確保し、マンション供給を続けていた業界に強い追い風が吹いた時期がありました。

バブル崩壊後の地価下落過程で、法人・団体は一斉に土地を放出し出したのです。それまでは一度取得したら手放さないで抱え込むことが「含み経営」のメリットであり根幹をなすものでしたが、右肩上がりの土地神話が崩壊し、並行して会計基準が国際化されたとなどによって、方針転換する企業が続出しました。

社宅、グラウンド、工場、倉庫、資材置き場、廃校や移転で空いた学校など、それまで憧れでしかなかった土地が次々とマンション業者の手に渡りました。その結果、バブル期には殆んど途絶えていた()新築マンションが息を吹き返したように急速に開発され、市場に送り出されたのです。

1991年の首都圏全体の新規発売戸数は、2017年の戸数35,898戸をも下回る26,248戸と低水準だった

 

2000年からリーマンショック前年の2007年までの年間供給戸数は、80,000戸を超えることとなりました。首都圏の年間需要は50,000戸くらいと言われていましたが、バブル期の供給不足がウエイティング需要を蓄積させていたことによって爆発的な売れ行きをもたらしました。

ところが、その後は地価の高騰もあってマンション用地は極端に減少しました。企業のリストラ(土地の置き換え・単純放出)が一巡してしまったのです。特に大規模敷地は湾岸エリアに限られてしまったかのようです。

 

供給が減っても、需要も減ればバランスするわけですが、最近数年の40,000戸前後の供給戸数に対して需要はどのくらいあるのでしょうか?

この答えとなる適切なデータは見当たりません。しかし、市場実感として言えるのは、50,000以上はあるということです。

(あぶれた10,000世帯は、待機組と中古購入組、建売住宅組などに分かれて行ったようです)

 

超長期で見れば、人口の減少が住宅需要の減少をもたらすことは間違いないですが、首都圏、とりわけ東京都区部は減少スピードが遅いと考えられています。直近では、全国の傾向と逆の人口増加傾向にあります。

 

こうした背景を見ながら考察して行くと、向こう10年程度で需要が2割も3割も減ってしまうことはないでしょう。しばらくは50,000戸程度の需要はあると見てよいのです。まあ、減っても40,000戸くらいは維持できるはずです。

都区部・都心などの特定エリアになると需要は底堅く、むしろ増えると見てもよいかもしれません。

 

●新築がなければ中古市場に人は向かう

供給戸数の激減は、次の10年後に築浅マンションの流通戸数も激減する状況を確実視させるデータです。

もし、今後も新築マンションの供給が4万戸程度で低迷すれば、中古需要が増えて中古物件の価格の底上げが起ることになります

 

だだし、物件固有の条件によって格差ができるのは言うまでもありません。

新築でも中古でも、優良マンションを買っておけば値下がりの確率はこれまで以上に低くなると考えられます。

 

●高く売れそうな物件とそうでない物件を見極めるために

新築でなければ嫌だという人もいますが、中古でもいいという人がいます。筆者の知る範囲では、中古の検討者も初めは新築を見ています。新築の方が気持ちいいのですから、予算の範囲に適当な新築が見つかれば新築にしたいのです。しかし、新築は高く、仕方なく中古も見ています。そう吐露する人が多いのです。

 

また、中古も探したがなかなか良い物件がないので新築に再び戻って探しています。このように言う人も少なくないのです。

 

新築であれ、中古であれ、より高く、より有利に売れるものを買っておきたいと悩む人も多いようで、「マンション評価」+「将来価格の予測」を筆者にご依頼下さる人は切れ間がありません。

 

筆者の「マンション評価レポート」は、依頼者をしばしば落胆させているようで、「背中を押して欲しかったのに」という声や「恋人をけなされたようで腹が立つ(筆者の想像)」の声があるのです。

しかし、筆者のスタンスは変わらず、シビアに(客観的に)評価して、レポートを送り続けています。その心は次でも述べますが、リセールの際に喜んで欲しいからにあるのです

 

●ダメ出しではない「評価サービス」で貢献したい

これまで3000件を超える「評価レポート」を作成して来ました。その中には、手放しで称賛できる物件もなかったわけではありませんが、微々たる数で、大半の物件は何かしら問題点を指摘せざるを得ませんでした。

立地条件に問題があるもの、建物グレードの劣るもの、有名業者の割には品質が二流というもの、品質は申し分ないものの価格が異常に高いもの、管理態勢に疑念があるもの、管理費が高過ぎるものなど、ここで具体的な事例は出せませんが、満点にはほど遠い物件が多いのです。

100点満点で、60点から70点の間の物件が大半というのが実感です。

評価レポートには、言うまでもなく筆者の所見をお付けしています。また、ご依頼者が不安・疑問に思う質問や相談メッセージを下さった場合には、当然ながら回答をお付けします。

このとき、いつも言葉の選択に迷います。温度が分からないと言えば良いでしょうか?躊躇している理由を細かにお伝えくださる人もいますが、まるで思いが伝わってこない人もあるので、どこまで踏み込んで所見や助言をすればいいか迷うのです。

基本的は、客観的、かつ具体的に所見を述べることにしていますし、それがモットーでもありますが、言葉選びを誤れば相談者の感情を害することもあるようです。レポートの所見が購買意欲を一気に冷却してしまうこともあるらしく、それが良い場合もありますが、購買意欲が一層盛り上がるように言ってあげた方が良い人だってあるはずです。

誤った選択をしようとしているのであれば、「冷静に」と呼びかけることが必要ですが、そもそも理想のマンションはないのです。「ダメ出し」ばかりでは、買えるマンションはなくなってしまいます。従って、枝葉末節の部分は大らかに見ることも必要であり、その点を念頭に置きながら、慎重に言葉を選ぼうと努めています。

評価レポートは、単にマンションに点数を付けるのが目的ではないのです。どちらかと言えば、「マンション購入の迷いを解いて決断の後押しすること」にあります。

こんな例があります。

「とても気に入ったマンションがあります。マンションを全体として見たとき、場所、建物の内容、売主や施工会社の信用度など、そして価格もリーズナブルのように感じます。しかし、自分の予算では2階しか届かないのです。マンションは上層階が良いことを知っています。前面には一戸建て住宅が並んでおり、若干の日照阻害とプライバシー侵害の懸念があります。どうしたらよいでしょうか。このマンションの価値評価と将来の売却について意見を聞きたい」という相談と物件の評価依頼でした。

ご相談者は、とても買いたがっている様子でした。しかし、調査してみると立地条件に問題がありました。つまり、場所を評価するモノサシにおいて大きな間違いがあったのです。

評価した結果を淡々と伝えるだけでいいか、このマンションはやめた方がいいと踏みこんで言うべきか、あるいは立地条件に少々問題がある気がするが、現地を見ていないのでと曖昧なコメントで逃げるべきか、立地に問題はあっても購入する価値はあるという理由をコメントすべきか等々、表現方法にひとしきり悩みます。言葉足らずであるかもかもしれません。あるいは、言葉の選択を誤り、依頼者様の逆鱗に触れることになるかもしれません。

単に評価ポイントを出し、短所・欠点ばかりを重箱の隅をつつくように探して「ダメ出し」レポートをお届けしても、評価サービスの価値はないと考えています。

このレポートは、依頼者が興味を持ち、魅力を感じたマンション、言い換えればお気に入りの物件を冷徹に評価するものです。その物件を飾りのない言葉によって、あたかも貶めるかのような誤解を与えてしまう場合があることについて予めお断りしておきたいと考えます・・・このように但し書きをしていますが、当方の葛藤がどこまで伝わるのかは自信がありません。

 

ともあれ、品不足の中、しかも相場高騰の現在、何とかお役に立ちたい。それが筆者の変わらぬ思いです。

 

●マンション選びは資産性優先ということでもない

マンションには「経済的価値」と「使用(利用)価値」の二つの側面があると考えられます。後者は、個人の価値観や家族の事情などによって幅があるもの、その大きさは他人には測り知れないものがありましょう。

仮に「経済的な損失」を被ったとしても、使用価値が高いことで大きな「精神的利益」を得て余りあるという場合があります。つまり、場所を含めて物件を気に入り、快適な暮らしができそうなら、その選択は間違いではないのです。

快適に暮らせるかどうか、豊かな気分を味わえるかどうか、その観点で新生活を想像してみましょう。金銭の多寡では測れないマンションの価値、それを測定するのは買い手自身です・・・このように、エピローグをまとめています。

 

マンション評価レポートは、依頼者の個人的な事情や好みなどを斟酌せずに、第三者の立場で客観的にコメント・進言・助言することに目的があります。念頭に、リセールバリューがどうなるかという視点を置いているからです。

自分の好みが他人の好みから大きく乖離していれば、リセールバリューは低くなることが多いものです。

万人受けするものは存在しないはずですが、より多くの人気を集めるマンションの方がリセールの価格は高くなるのが普通です。しかしながら、リセールするときまでの間、快適で幸福な暮らしができないのでは本末転倒ということになります。

 

どのあたりで折り合いをつけたらいいのか、レポート読後の悩みは逆に増してしまうのかもしれません。そんなことも想像しながらレポートをまとめるのは簡単ではありませんが、依頼者の期待をときどき裏切りながら、今後も悩みながらレポートを作成して行こうと思っています。

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

 

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