第134回 建売住宅は本当に安いか?

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地価も建築費も上がって価格高騰が著しいマンションですが、これに対して建売住宅は用地もさほど高くなっていないことに加えて、建築費も鉄筋コンクリート造のマンションほど高くないためにマンションほど値上がりしていないと言われます。その結果、建売住宅が相対的に買いやすくなっているというのです。

本当にそうなのでしょうか?実態を調べてみました。

~2017年(データ出典:不動産経済研究所)~

◆建売住宅の供給状況

供給戸数:建売住宅はマンションに比べてどのくらいの数が供給されているのでしょうか?

東京都1551棟/神奈川県737棟/埼玉県1246棟/千葉県1462棟・・・首都圏合計4996棟

マンションの発売戸数が約36000戸でしたから、建売は14%に過ぎません。

過去3年の平均では、建売住宅は年間4000~5000戸。新築マンションは減ったとはいえ、35,000戸と圧倒しています。

 

平均価格:建売住宅の価格は平均いくらかというと、本当にマンションより安いのです。このことに驚く人も多いことでしょう。

東京都:6127万円/神奈川県5619万円/埼玉県3993万円/千葉県3753万円・・・首都圏全体の平均は約4850万円です。

(マンション価格の平均は東京23区が7089万円、東京市部が5054万円、神奈川県が5524万円、埼玉県が4365万円、千葉県4099万円)

新築マンションは首都圏平均5908万円で、建売住宅を約1000万円も上回っています

 

ただし、このような単純比較は意味がありません。面積も品質も、耐久性も異なること、何より駅から近い位置に建設されることが多いマンションに対し、建売住宅は徒歩圏にあっても10分以上を要するものが多いのですから。

しかし、マンションに設けられる「管理費・修繕積立金」の負担も、駐車料金も不要という利点が一戸建てにはあります。

 

比較論を展開するとキリのない話になります。マンションか建売かの比較は本来ナンセンスなこと、価値観によって評価は分かれるのです。

とはいえ、マンション派の筆者から見れば、どうしてもマンションを贔屓してしまいがちです。何千万円も出して、貧相で似たような外観の一戸建てが立ち並ぶ中の我が家を誇りには思えないのです

 

家は雨露を凌げればよいというものではありません。ある種のステイタスシンボルでもあるのです。つまり、経済論理だけで選ぶのではないと考えます。古臭い表現を使うと、男の汗の結晶、それがマイホームですから。

しかも、資産として見るということになると、20年で建物代が「だだ同然になる」と言われる一戸建て住宅に対し、マンションは築30年でも高い価値を維持し続けるものがあるだけに、マンションを選ぶ人が多いのも頷けましょう。

 

参考までに面積を見てみます。安い一戸建てですが、その規模は以下のようになっています。

東京都(敷地114.38㎡ 建物97.20㎡)・神奈川県(敷地123.31㎡ 建物99.72㎡)

埼玉県(敷地120.37㎡ 建物99.18㎡)・千葉県(敷地142.42㎡ 建物102.14㎡)

 

 

◆新築の一戸建ての販売実例を覗いてみる

郊外や東京都の外周部に行けば一戸建てもきっと安いに違いない。誰もが、このように想像することでしょう。問題は東京都内で販売されている建売住宅がどの程度のものかです。

そこで、 目黒区と世田谷区に絞って概要を見てみます。

 
  • 4920万円
所在地:東京都世田谷区千歳台3

沿線・駅:小田急線「千歳船橋」徒歩12分
土地面積:66.09㎡ 間取り:3LDK:建物面積:71.04m2
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  • 4980万円~5480万円
所在地:東京都世田谷区宇奈根2

沿線・駅:東急田園都市線「二子玉川」バス9分停歩1分
土地面積:100m2・100.01m2 間取り:3LDK:建物面積:79.48m2
    *********************
  • 4980万円
所在地:東京都世田谷区鎌田2

沿線・駅:東急田園都市線「二子玉川」バス11分停歩1分
土地面積:61.06m2 間取り:2LDK+S(納戸)建物面積:94.85m2
    *********************
  • 4980万円
所在地:東京都目黒区目黒4

沿線・駅:東急東横線「祐天寺」徒歩13分
土地面積41.44m2(実測) 間取り2LDK建物面積49.37m2
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  • 4980万円
所在地:東京都世田谷区八幡山1

沿線・駅:京王線「上北沢」徒歩15分
土地面積51.7m2 間取り3LDK建物面積87.87m2
    *********************
  • 4980万円
所在地:東京都世田谷区千歳台1

沿線・駅:小田急線「祖師ヶ谷大蔵」徒歩9分
土地面積 44.11m2 間取り 2LDK+S(納戸) 物面積66.13m2
    *********************
  • 5280万円
所在地:東京都世田谷区北烏山9

沿線・駅:京王線「千歳烏山」徒歩19分
土地面積:64.48m2(登記) 間取り2LDK+2S(納戸)建物面積93.28m2
    *********************
  • 5580万円
所在地:東京都世田谷区喜多見5

沿線・駅:小田急線「成城学園前」徒歩18分
土地面積175.55m2(実測) 間取り4LDK建物面積101.02m2
    *********************
  • 5680万円
所在地:東京都世田谷区北烏山1

沿線・駅:京王線「芦花公園」徒歩10分
土地面積94.12m2(実測) 間取り3LDK建物面積75.2m2
    *********************
  • 5780万円
所在地:東京都世田谷区上北沢5

沿線・駅:京王線「上北沢」徒歩5分
土地面積55.25m2(実測) 間取り3LDK建物面積91.31m2
    *********************
  • 6180万円
所在地:東京都世田谷区北烏山3

沿線・駅:京王線「千歳烏山」徒歩8分
土地面積89.18m2 間取り3LDK建物面積88.18m2
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※駅から比較的近いものもないことはないと分かります。しかし、敷地面積は50㎡台、60㎡台と狭小。建物も3階建てが多いようです。猫の額と形容されそうでも庭が付いているものはマシな方です。

敷地に幾分かの余裕があって、駐車場も取っているとなれば敷地面積は100㎡を超えますが、そうなると以下のような駅から徒歩15分以上、バス利用の立地になるのです。
  • 6180万円
所在地:東京都世田谷区喜多見7-1

沿線・駅:小田急線「成城学園前」徒歩17分
土地面積118.68m2(35.90坪) 間取り4LDK建物面積94.4m2(28.55坪)
 

 

◆大手が手掛ける団地

以下は、都区内の建売住宅としては大規模の部類に入る32戸の開発例です。

(売主:コスモスイニシア)


 

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6900万円~8900万円台

所在地/東京都世田谷区北烏山9-1997番7他(地番)

沿線・駅/京王線「千歳烏山」徒歩10分
土地面積106.67m2~135.74m2 間取り建物面積99.69m2~106.71m2
 

大手マンションデベロッパーは、建売住宅も手掛けています。

三井不動産レジデンシャル、野村不動産、住友不動産、三菱地所レジデンス、大京などに最近の供給事例が見られますが、活発なのは三井と野村です。

上記のコスモスイニシア社をはじめとする準大手・中堅どころも、僅かながら供給をしています。

 

◆パワービルダーという存在

最も活発なのは「パワービルダー」という名の企業群です。

飯田産業、一建設、アーネストワン、東栄住宅、タクトホームなどの飯田クループが最も有名です。

 

スケールメリットを生かして建材の調達コストを下げていることと、間取りや建材の種類を絞ることにより2ヶ月の短工期で建てられるようにして人件費を抑えています。

部材の大量仕入れと設計の平準化、短い工期・・・これが大量供給と売り上げ拡大、高利益率を実現させている秘訣とされています。

 

これらの企業にはとかくのうわさも多いのですが、大手ハウスメーカーは無論、大手マンションデベロッパーなどの家に比べると安いのは事実です。ただ、そこに満足感を持てるかは個人の価値観によって違ってくるのも確かです。

 

◆駅から遠い住宅の将来

マンションは利便性が重視されますが、一戸建てを購入する人は利便性を求めていないのでしょうか?そんなことはないはずです。

 

利便性が高い立地条件で一戸建てを求めても手が届かないために利便性を諦めているのです。マンションでも広くて安いものを探すとバス利用などの不便な物件になるのですから、どちらも同じです。

 

つまり、マンションだろうと一戸建てであろうと、利便性は優先条件になるはずです。毎日のように中古マンションの相場や特定マンションの価格を調査している筆者は、交通便の悪いマンションの共通点がほぼ例外なく値下がりしていという事実に、毎度「やはりな」という思いを持つのです。

 

マンションもそうなら、一戸建て住宅も同じに違いありません。つまり「リセールバリュー」の観点で見ると、建売住宅は住宅ローンを利用して買うと、10年や15年では売るとき残債割れ間違いなしと考えざるを得ません。

◆「駅から遠いが、スーパーもそばにあるので便利」という家の問題点

広い駐車場を備えた郊外型のスーパーマーケット。車社会においては、成功するビジネスモデルでした。今でも、マンション開発の現場では、近くにショッピングモールがあるケース、もしくはマンション開発とショッピングモールの誘致を併せて進めるケースがあります。

 

この複合開発は、駅から遠いマンションの弱点をかなりの部分で補っています。その結果、価格の安さと相まって販売が順調に進んだケースも散見されます。その一方、大型ショップが3店も集まっているというロケーションの郊外で、駅にも徒歩10分以内で歩けるにも関わらず、販売に苦戦している例があります。

 

これら成功・苦戦の実例から感じ取ることができることは、買い物施設がひとつあるというだけでは暮らしに不十分だということ、主婦にとっては徒歩2~3分の場所に買い物施設があるのは魅力だが、夫の通勤は少しも便利でないことに問題があるのです。

 

かつての価格急騰期には、「一生買えなくなるかもしれない」という強迫観念に襲われ、郊外・超郊外にマイホームを求めて行動したものでしたが、最近の傾向は「共稼ぎ家庭」が増えて、交通便の悪いマイホームは嫌われます。近くに職場がある人にとっては不便でなくとも、数が圧倒的に多い東京都心通勤者は目を向けません。つまり、需要が多くないのです。

 

需要が少ない家は、言うまでもなく高く売れるなどということはありえません。

 

また、郊外型のショッピング施設は永遠に存続するとは限らない点にも気を付けておかなければなりません。大型スーパーが1軒あるだけの街は、そのスーパーがなくなったら街の灯は消えるでしょうし、不便この上ありません。

ネットスーパーを利用すればいいと悠長に考える人もいるのかもしれませんが、住宅以外は何もない街は寂しいものです。侘しさも感じると言います。

 

そんな未来が、遠くない将来訪れるかもしれないのです。そんな所にマイホームを買ってしまったら、不便というだけでなく、資産価値の下落は目を覆うばかりとなりましょう。

 

これは、郊外・駅から遠い立地の住宅の未来を述べたもので、都心や準都心なら、その心配はないでしょう。しかし、だから需要もあるはずだし、リセールの心配はない。このように考えていたら、それもとんでもない話です。

 

都心や準都心でも、駅から遠い住宅は敬遠される傾向が強いのです。高齢化と若年世帯の減少が進むことによって、不便な家の需要が減ることは間違いないのですから。

 

◆建売住宅は耐久性の問題がある?

リセールバリューの観点で建売住宅を見ると、もうひとつの問題が浮かび上がります。それは、木造住宅の価値評価がマンションに比べて低いことです。

詳細は省きますが、実質価値は残っていると言えても、市場では建物代が評価されにくいのです。築20年にもなると建物代がゼロとされる実態があるぼも事実です。土地は比較的査定がしやすいのですが、建物は評価がしにくいのです。

 

その点、マンションは土地と建物を分離して査定するものではなく、一体的に評価されます。売買事例も多いので比較もしやすい傾向があります。

結局、価格の単純比較をしたとき、安い一戸建てが増えている(建売住宅の価格はそにままに中、マンション価格は上昇すたので逆転した)のは事実ではあるものの、その価値を判断したり、将来価値を検討したりすると、建売住宅に魅力を感じる人は多くないのではないかと思います。

 

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冒頭に紹介したように、建売住宅の数は首都圏に関する限り、小さなマーケットに過ぎません。従って、価値観の異なる買い手が建売住宅を選択したとして、それがマンション需要を大きく侵食するということでもありませんから、ことさら問題視することでもないのかもしれません。

 

しかし、建売住宅の価格の安さに惹かれて粗悪品を購入したり、リセールバリューの観点を見落としたりして、将来に禍根を残すことがあってはなりません。もし、読者の中にマンションをやめて建売に転向することを考えている人があれば、敢えて申しましょう。よくよく考えてから方向を決めた方が良いことを。

(外部サイトのブログ 第599回「安価な建売住宅に思う」もご参考にどうぞ)

 

 

・・・・・・本日はここまでです。ご購読ありがとうございました。

 

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